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【免疫力UP情報】 茨木市で食育後援会 動物の食などを学ぶ

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第11弾は「むすび誌2019年10月号」より茨木市食育講演会の様子のレポートです。
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市民学習会「おむすびの会」と竹下和男さん提唱の「弁当の日」を推進する「オフィス弁当の日」などが開いてきた食育情報交換会。
毎年3月と8月に開催されてきましたが、第14回となった2019年8月1日は、大阪府内の茨木市が主催に加わり、同市役所で「茨木市食育講演会」として開催されました。

百年後の未来のため

 食育情報交換会が、自治体と連携して公共施設で開催されるのは初めて。
 子どもが自分で献立づくりから買い出し、調理、弁当箱詰め、片付けまでを一人で行う「弁当の日」を提唱してきた竹下さんは、「子育てが楽しいと言い切る男性と女性をまちぐるみで育てていく」ことを目指してきただけに、茨木市の意欲的な取り組みに感慨深い様子で、基調講演に臨みました。
 茨木市は健康づくりや健全な食生活への関心を高める観点から食育推進に積極的に取り組んでいます。この日の講演会もそうした活動の一環で、市内の教育関係者や食育にかかわる市民ら200人あまりが集まりました。
 そうした参加者を意識して、小中学校の教育現場でさまざまな子どもたちに接してきた竹下さんは、教師自身が成長する姿を見せることで、子どもたちは「生きていくことは成長することだ」と自覚していくと説きました
 そして、子どもたちの健全な成長を図り、百年後の未来を変えようという遠大な目標をもって、竹下さんが2001年から取り組み始めたのが「弁当の日」でした。

料理に命を和える

竹下さんがとくに心配しているのは「子育てをしなくていい社会づくり」がどんどん進行していることです。
 「ゼロ歳児から預けなさい、育児は人に任せなさい、ということをやればやるほど、自分の子どもを育てるのが嫌だという感覚になります」。そうなると、「次世代が育たない社会」になってしまいます。
 そこで竹下さんが訴えるのが、食をとおした親から子への命のバトンタッチです。
 親がつくった手料理には、自分の子どもを育てたい、おいしいと思ってほしい、という願いが込められています。手料理を食べるとき、食材の命とともに、つくった人の命をいただくことになる、という視点から、竹下さんは「料理には、つくった人の命(寿命)が和えられている」と表現しました。
 「弁当の日」を体験した子どもたちの多くは、弁当づくりを苦にしなくなります。そんな子たちが大人になって結婚し、子どもができたら、子育てを楽しみ、わが子や家族のために喜んで弁当をつくるようになります。
 いま「8050問題」など、ひきこもりが大きな社会問題になっていますが、食事を用意できることは自立への大きなステップにもなります。
 「たった一人で家族全員のごはんと味噌汁がつくれる子どもは、小中高校生で1%だけ」と嘆く竹下さんですが、もちろんあきらめません。全国を行脚する講演は今秋には2400回を迎えます。

動物に有機の食を

 午後の講演では、有限会社クローバーリーフ取締役会長の西窪武さんが「動物に餌ではなく、食を届ける
と題して話しました。
 京都府南山城村にある同社では、40ヘクタールもの広大な敷地で、動物園で飼育されている動物たちの食べものを育てています。
 動物の食べものというと、種類によって違うだけでなく、年齢によっても人間のように高齢化すると軟らかいものを好むようになったり、季節や気候によっても変化します。
 例えばユーカリ。全部で3000種類ほどもあるそうですが、そのうちコアラの食べるのは200〜300種類。
さらに「自分の育ったところのユーカリしか食べない」ということで、一匹のコアラが食べるのは20〜30種類に限られるといいます。まさに身土不二です。
 動物に合わせた食べもののオーダーメイド化を進める同社は、食材となる草木を無農薬・有機栽培しているだけでなく、機械の油がついたり地面の石が入らないよう、すべて人力による手刈りで収穫しています。
 出産を控えた母ゴリラがドクダミを食べて体調を整えていたのではといった興味深い話や、西窪さんが持参した動物たちの食材に参加者は興味津々。
 「子どもたちの食べものが餌になっているという危機感がある。その気づきの機会にしてもらいたい」という竹下さんの狙いは大当たりでした。

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竹下和男(たけした・かずお)
1949香川県生まれ。香川大学教育学部卒業。香川県・滝宮小学校の校長在職中に始めた子どもひとりで作らせる"弁当の日"が評判に。現在、全国2300校以上で実践されている。

【免疫力UP情報】マクロビオティックのエビデンス③

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第10弾は「むすび誌2018年6月号」よりマクロビオティックのエビデンスの記事です(全3回)。
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「マクロビには強固な科学的エビデンス」

死亡率低下に多くの根拠

 下
の表は、作田さんが一般社団法人・日本防衛衛生学会が定期発行する学会誌「防衛衛生」2016年1112月号で発表した論文「マクロビオティックスのエビデンスはどの程度か? 低炭水化物ダイエットないし西洋食へのアンチテーゼ」に掲載されたものです。
 作田さんは、世界の主要医学系雑誌に掲載された文献を対象にした検索エンジンのパブメドを駆使するなどして、最新の医学情報を入手しています。
 そうして得た健康についての知見と、マクロビオティックについては米国で活躍した久司道夫氏が体系づけた内容を主に参考にして、マクロビオティックのエビデンスについて調査しました。
 それによると、死亡率低下については、「卵をまったく摂らない」と「低脂肪乳製品を多く摂らない」以外は、ほとんどの推奨事項で一定のエビデンスがあることがわかります。



小食やプチ断食にも効果

穀物菜食と一物全体のほか、マクロビオティックでは「食べすぎ」を戒め、小食を心がけます。
 カロリー制限について作田さんは、以下の長所を挙げます。
 ・ミトコンドリアの機能を活性化させると同時に量も増やして老化を防ぐ
 ・老化酵素(mTOR)を不活性化して寿命を延ばす
 ・オートファジー(自食機能)を促して炎症を抑える
 ・褐色脂肪を増やして肥満対策(減量)や2型糖尿病の予防にもなる
 ・ほか心血管疾患やがん、認知症、サルコペニアの予防にも役立つことも示唆される
 「カロリー摂取を控えめに」という推奨事項が◎になっているのは、短命のネズミだけでなく、遺伝的に人間と近く、割と長命であるアカゲザルを使った実験でも、カロリー制限により寿命を延ばすことが示唆されたからです。
 同様に間欠的絶食(プチ断食)についても、作田さんは「健康にいい」と考えています。
 ただし、朝食については、体内時計の概日リズムを保って健康を維持するためにも、決められた時間にきちんと摂ることを勧めています。

うつなど心の健康に影響

 
植物性食品中心の食事については、作田さんは「からだだけでなく心の健康にもよい」と話します。
 「炎症はうつにも関係している」ということで、炎症を抑えることは老化とともにうつも抑えると考えられます。
 そのメカニズムの一つが、食物繊維が腸内細菌を善玉化し、炎症性物質(LPS)の腸から体内への流入を防ぐ仕組みです。
 7ページで「動物性の脂肪に含まれる飽和脂肪酸が炎症を引き起こす」という説明の中で、腸内細菌を悪玉化すれば炎症性物質が体内に流入しやすくなるとありましたが、炎症性物質は血液脳関門を通過して脳に届くことがわかっています。すると、うつや不安に見舞われ、病状を悪化させます。「肉の多量摂取は、心の健康に悪影響を及ぼす」(同書)のです。
 植物性食品中心というと、理想は菜食主義ですが、作田さんは「ヘルシーな菜食主義」とそうでないものの2種類があると見ています。
 ヘルシーな方は、全粒穀物や野菜、果物、豆、ナッツ、海藻などで、白いパンなどの精製穀物やシュガーを多く摂るのは、菜食主義といってもあまりヘルシーとはいえません。
 また、青魚などに含まれるオメガ3脂肪酸もうつ症状を改善することが示されています。作田さんによると、「米国の循環器学会も精神学会も、魚を1週間に2回以上摂った方がいいといっています」とのことでした。

老化や関連疾患の予防も

 
これまで作田さんの研究をざっとみてきたところで、最新の現代医学に照らしてマクロビオティックにはかなりのエビデンスがあることがわかってきたと思います。
 上述の論文でも作田さんは「久司らがマクロビについて啓蒙活動を始めたとき、その主張について十分な科学的証拠があったわけではない。だが、先見の明があったためか、それとも偶然か、それらの主張は、今日では、強固な科学的エビデンスを得ている」と分析しています。
 さらに「マクロビの唱える食事法のうち検証可能な主張については、現代の科学的知見に照らしても、老化や老化関連疾患の予防上、有益である可能性が高い」とも記しています。
 取材でも「自分が勉強した中で、マクロビオティックは非常に追い風というかエビデンスがあるなと感じました。老化を抑制する方向は正しく、メンタル面を考えても、マクロビオティックは間違っていないと思います」という力強いエールをいただきました。
 ただし、マクロビオティックの基本のうち、身土不二や陰陽調和について検証が難しいという指摘もありました。

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作田英成(さくた・ひでなり)
1957年東京生まれ。医学博士。82年に防衛医科大学卒業後、自衛隊中央病院、自衛隊熊本病院などで勤務。97〜99年皇太后侍医(宮内庁出向)。
2007年自衛隊仙台病院副院長、13年自衛隊中央病院診療技術部長、15年同病院総合診療科部長を経て、17年8月に蒲田リハビリテーション病院副院長に就任。
日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本内分泌学会評議員・内分泌代謝科専門医、日本医師会産業医。専門は内分泌代謝。

【免疫力UP情報】マクロビオティックのエビデンス②

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第10弾は「むすび誌2018年6月号」よりマクロビオティックのエビデンスの記事です(全3回)。
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理にかなっていた「穀物菜食」「一物全体」

老化を早める動物性食品
 
著書で作田さんは「植物性食品が主体の食事は、炎症や肥満を抑え、老化を遅らせます」と述べます。
 逆に、「動物性のたんぱく質や動物性の脂肪の摂り過ぎは炎症をひきおこし老化を早めます」。その主な理由は以下のとおりです。

 ・食肉や高脂肪乳製品(クリーム、バター、チーズなど)に含まれる飽和脂肪酸やファストフードの揚げ物に多いトランス脂肪酸は炎症を引き起こし、心血管疾患や2型糖尿病、サルコペニア(加齢に伴う筋量減少や筋力低下)、がん、認知症のリスクを高める
 ・飽和脂肪酸は腸内細菌を悪玉化し、腸管の炎症性物質(LPS)の透過性を高め、体内への炎症性物質の流入を促す。これにより炎症が引き起こされ、老化が早まる。飽和脂肪酸が多いと、悪玉コレステロール値も高める
 ・動物性たんぱく質に多い必須アミノ酸(からだの中でつくることのできないアミノ酸)の一つのメチオニンは、制限しすぎると欠乏症を招くが、日本でふつうに食事をしていてメチオニンが欠乏することはあり得ない。餌に含まれるメチオニンを80%減らすと寿命が40%延びたという動物実験から、軽度のメチオニン制限は人でも老化を抑える可能性がある
 ・食肉に含まれる鉄(ヘム鉄)は、植物性食品の鉄よりも消化管から吸収されやすく、貯蔵鉄(フェリチン)になりやすい。貯蔵鉄が増えすぎると脂肪細胞や骨芽細胞に蓄積し、それらの細胞でのホルモン(アディポネクチン、レプチン、オステオカルシン)の合成を抑える。その結果、過剰の鉄が糖質代謝を悪化させて、肥満を助長し、血糖を高め、炎症を誘発する
 ・動物性たんぱく質中の必須アミノ酸、中でもロイシンなどの分岐鎖アミノ酸が「老化酵素」であるmTORを活性化し、老化を早めて寿命を縮める

死亡率高い低炭水化物食

 動物性のたんぱく質や脂肪の多い食事とは、低炭水化物(LC=ローカーボ)食にほかなりません。
 国立国際医療研究センターが研究データのメタ解析をした2013年の報告によると、LC食の人は非LC食の人に比べて死亡率が1・31倍にも高まっていました。
 ごはんなどの糖質を断つ代わりに肉や乳製品をいくらでも食べていいという糖質制限食は、上記のようなはっきりとしたエビデンスのある理由により、死亡率が3割も上がってしまうのです。
 著書で作田さんは「LC食は、心臓や血管にとって有害であり、老化を早め、寿命を縮めるのです」と断言しています。
 なお、「動物性たんぱく質」といっても、主に問題になるのは牛や豚といった家畜肉の赤身であり、魚介類や鶏肉(白身肉)はリスクを高めません。
 例えば、不飽和脂肪酸に富む魚介類や卵は悪玉コレステロール値を上昇させず、魚介類に多いオメガ3脂肪酸は炎症を抑えます
 また、2014年に医学専門誌に掲載された報告によると、65歳以下の場合は、たんぱく質を多く摂る人が、あまり摂らない人より死亡率が70%も高まるとする一方、66歳以上だとむしろたんぱく質を多く摂る人の方が死亡率が下がっていたということです。
 このことから、作田さんは、高たんぱく質食が老化におよぼす影響が年齢により異なると考え、「肉は65歳までは少なく、65歳を超えたら多く摂るのがよい」と指摘します。
 一方、糖質制限食をはじめとしたLC食について作田さんは、まったく否定しているわけではありません。
 人によっては一時的にでも適応している場合もあるからですが、専門である糖尿病の標準的な治療としても、LC食にはエビデンスもなく「とくにすすめられるものではない」といいます。

食物繊維が老化を防ぐ

 前置きが長くなりましたが、動物性食品が多い食事の短所は、ひっくり返せば動物性食品が少なく植物性食品の多い食事の長所になります。
 そのほか、作田さんが注目しているのが、食物繊維です。あたり前の話ですが、食物繊維は植物にしか含まれません。その食物繊維が老化を防ぐというのです。
 テロメアというと、染色体の両端にあるDNAの繰り返し配列のことで、年をとるとともに細胞分裂をして短くなり、老化を促すことが知られます。しかし、テロメレースという酵素を活性化させると、テロメアの短縮が抑えられることがわかってきました。
 そのテロメレースを活性化させるのが、食物繊維に富む全粒穀物や野菜、豆、果物で、食物繊維を多く摂る人ほどテロメアが長くなることが、世界的に権威のある医学専門誌「ランセット」で報告されました。



果物より全粒穀物から摂取

 
食物繊維には、腸内の善玉菌を増やすはたらきもあります。それにより炎症性物質(LPS)ができにくくなります。
 善玉菌は食物繊維を発酵・分解して、短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)をつくります。短鎖脂肪酸は肥満を抑えて代謝を改善し、炎症を抑えて老化を遅らせます。
 また、腸内で短鎖脂肪酸とともに水素を発生させます。水素は、細胞を傷つけ老化の一因となる活性酸素を中和しますが、食物繊維由来の水素が有益かどうかはいまのところはよくわかっていません。ただし疫学的な調査では、食物繊維を多く摂ることがよいのは確からしいとされています。
 食物繊維には水溶性のものと不溶性のものがあります。
 水溶性の食物繊維は腸内で発酵してさまざまな有益な効果を発揮するほか、不溶性の食物繊維はほとんど発酵せず、デンプンの消化を遅くして、食後の血糖の急上昇(食後高血糖)を抑えます。
 食物繊維がいいというと、サプリメントで補おうとする人がいますが、「食物繊維が健康によいという証拠は食事由来の食物繊維でしか得られていない」ということで、作田さんは「食物繊維は食事から摂るべきです」とアドバイスします。
 「食物繊維を多く摂る人は死亡率が低い」ということも確認されており、さらに「全粒穀物や野菜から食物繊維を摂る方が、果物から食物繊維を摂るよりも死亡率を下げる効果が大きい」(『「老い」を遅らせる食べ方』)といい、注目されます。

野菜の硝酸が血管を改善

 
主にホウレンソウなどの葉野菜や大根から摂取される、硝酸(HNO )という成分があります。硝酸は以前は有害と考えられていました。
 ところが近年、硝酸は体内で一酸化窒素(NO)に変換し、血管や心臓などに対して有益な効果があることがわかってきました。
 その一つは、血管の老化を抑えて機能を改善し、動脈硬化の予防や高血圧の治療に役立つというものです。
 二つ目は、運動のパフォーマンスや持久力の向上です。
 三つ目は、ミトコンドリアを多く含む褐色脂肪を刺激し、肥満対策(減量)に有望と考えられます。
 ふつう脂肪は熱をたくわえますが、褐色脂肪は逆に熱を燃やします。冬眠している間にからだが凍ってしまわないよう、クマなどの冬眠する動物にあり、人間は、裸で生まれてくる新生児以外にはないのではとされてきましたが、最近になって大人にも褐色脂肪があることがわかってきました。
 褐色脂肪が刺激されると、熱産生が増え、肥満のほか2型糖尿病の予防にもなります。
 褐色脂肪は、トウガラシのカプサイシン、緑茶中のエピガロカテキン、海藻中のフコサンチンによっても刺激されます。

リンゴも皮つきで食べる

 炭水化物については、精製か非精製かということがあります。もちろん非精製のものの方がすぐれています。
 「老化は精製穀物(白いご飯や白いパン)やシュガーなど不健康な炭水化物を多く摂ると早まり、全粒穀物や豆やナッツなど食物繊維に富む炭水化物を多く摂ると遅くなります」「全粒穀物(玄米や全粒パンなど)を多く摂る者は死亡率が低いことがわかっています」(いずれも同書)
 一物全体食を英語ではホールフードといいますが、素材をそのまま食べる「素材食」といういい方を、作田さんは著書で紹介しています。
 リンゴの皮は抗がん物質に富んでいるほか、サルコペニア予防作用のあるウルソリック酸という物質も含んでいます。リンゴも皮つきで食べる方がいいのです。
 作田さんは、一物全体の対極にあるサプリメンに頼る風潮にも、「サプリメントはエビデンスに乏しい」として批判的な立場です。
 穀物菜食と一物全体というマクロビオティックの基本は、現代科学から見ても、理にかなったものといえそうです。

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作田英成(さくた・ひでなり)
1957年東京生まれ。医学博士。82年に防衛医科大学卒業後、自衛隊中央病院、自衛隊熊本病院などで勤務。97〜99年皇太后侍医(宮内庁出向)。
2007年自衛隊仙台病院副院長、13年自衛隊中央病院診療技術部長、15年同病院総合診療科部長を経て、17年8月に蒲田リハビリテーション病院副院長に就任。
日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本内分泌学会評議員・内分泌代謝科専門医、日本医師会産業医。専門は内分泌代謝。

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「健康にいい」とは「老化を遅くする」

健康長寿の実現に向けて

私たちは日常的に「健康にいい」「悪い」と口にしますが、「健康にいい」とはどういうことなのでしょうか。作田さんはそれを「老化を抑える」か「促進する」かで判断します。
 アンチエイジングという言葉がありますが、時計の針を逆に戻すことはできません。しかし、忍び寄る老いのスピードをいくらか緩めることはできます。
 つまり「健康的に老いる(ヘルシー・エイジング)」にはどうすればよいのかが問題であり、著書にあるとおりいかに「老い」を遅らせるかが、昨今話題の健康長寿の実現にもつながるのです。
 その「老い」の指標となるのが、炎症です。

炎症が老化を早め病気に

 
炎症は、外傷による急性炎症のほか、肥満や大気汚染などが原因でも慢性炎症が生じます。加齢とともにかかりやすい心血管疾患や脳卒中、認知症、2型糖尿病、がんなどの老化関連疾患も、実は慢性炎症が発病を促していると考えられます。
 「炎症が老化を早め、老化関連疾患のリスクを高める」(『「老い」を遅らせる食べ方』)といい、これを「炎症老化」といいます。例えば、「糖尿病は老化病の一つ」と作田さんは話します。
 ということは、いかに「炎症を抑えるか」が「健康にいい」食べものの基準となります。
 実際、アメリカで行われた研究で、炎症のマーカー(白血球数やCRPなど)と血糖のマーカー(HbA1c)、肥満(BMIなど)といった指標を使い、実年齢と生物学的な年齢を比べたところ、老けやすい人は1年で1.2歳ほど年をとっていました。反対に老けにくい人は、1年で0.8歳しか年をとっていませんでした。

 食事によって老化に差

 
「どうも生物学的年齢は、実際の年齢に比べると、プラスマイナス2割ぐらいの幅があるらしい。同じ40歳でも、生物学的には48歳の人もいれば32歳の人もいる。それでは、40歳で32歳の生物学的年齢を保てるにはどうしたらいいか。ひと言でいうと炎症を抑えることが老化を遅らせることになるので、そうなるような生活をすべきでしょうということです」と作田さん。
 「老化の早さには個人差があり、それには食事が関わっています」(同書より)
 それでは、炎症を抑えて老化を遅くする食事とはどんなものなのでしょうか。マクロビオティックと照合しながらみていきたいと思います。



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作田英成(さくた・ひでなり)
1957年東京生まれ。医学博士。82年に防衛医科大学卒業後、自衛隊中央病院、自衛隊熊本病院などで勤務。97〜99年皇太后侍医(宮内庁出向)。
2007年自衛隊仙台病院副院長、13年自衛隊中央病院診療技術部長、15年同病院総合診療科部長を経て、17年8月に蒲田リハビリテーション病院副院長に就任。
日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本内分泌学会評議員・内分泌代謝科専門医、日本医師会産業医。専門は内分泌代謝。

【免疫力UP情報】食改善し体温アップ②

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
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第9弾は「むすび誌2019年5月号」より第13回食育情報交換会のレポートです(全2回)。
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発酵食品やあいうべ体操

 一日三食とすると、年間では一一〇〇食以上。うちの学校給食は約二〇〇食にすぎません。本格的な食改善には家庭での食の見直しが欠かせません。
 吉田さんから「人間のからだは30日で半分入れ替わる」と聞いた山下さんは、本気で食改善に取り組むことで体調の変化が実感できる「30日間チャレンジ」を実施しました。
 
 ① 毎日、イリコを10匹食べる
 ② 旬の野菜を皮ごと、芯ごと食べる
 ③ 毎日、発酵食品を食べる
 ④ ひと口30回噛んで食べる
 ⑤ 清涼飲料水をやめ、お茶か水にする
 ⑥ 「あいうべ体操」を30回する

 あいうべ体操では、口を大きく「あ・い・う・べ」と動かします。唾液の分泌を促し、口や舌を鍛えることで、口呼吸から鼻呼吸への転換も図ります。口呼吸から鼻呼吸にするだけで、病原菌の侵入をかなり防ぐことができます。
 子どもたちがイリコをよく食べるようになったおかげで、スーパーでイリコの特設コーナーができたほどでした。職員室でもイリコが常備されるようになったそうです。



「イライラしなくなった」

 吉田さんが実践し提唱している、生ごみをリサイクルしてつくる土づくりと野菜づくりにも挑戦しました。
 そうしてつくった無農薬のニンジンと、スーパーで売られているニンジンを全校児童が生で食べ比べをしてみました。
 味の差は歴然で、前者はみんな「おいしい」と完食しましたが、後者はぐみがあってとても食べられないことを実感しました。
 「子どもが変わると親も変わる」(山下さん)ということで、家庭からは「なぜ子どもがけんかをしなくなったんだろうか」「なぜ毎日トイレに行くようになったのか」「なぜイライラしなくなったのか」「なぜ朝スッと起きるようになったのか」といった驚きの声が寄せられるようになりました。菓子パンとお茶という朝食も、70%から40%に減りました。
 子どもたちも「授業に集中できるようになった」「争いごとが減ってきた」「いじめがなく、学校生活が安心してできる」。
 山下さんは「発達障害的な症状も、食べものを変えてやれば変わります。毒を食べたらどこかで毒を吐き出さなければならないので、それが問題行動やキレる行動につながる。正常なものを食べさせると、本来の人間のやさしさや思いやりが育ってくるのかなと思います」と話しました。

小児メタボが13%からゼロ

 以上のような取り組みを続けた結果、25年度は体温がさらに上がって36.5度以上が83%。36度以下は当初の90人からゼロと、低体温状態がほぼ解消されるまでになりました。
 「体温が高い子どもは学力が高い」という傾向があるそうで、「機械は温めると能力を発揮するように、子どもを塾に行かせるよりもまずは食べものを変えて体温を上げてやって、正常な生活をすると、能力を発揮するのは」
 インフルエンザの延べ患者数はわずか19人。24年度に小児メタボと判定された12.9%が、翌年はゼロに。脂質異常判定者は23.8%から9.2%に激減しました。
 教職員からも、髪の毛がよく伸びて「散髪代がかさむようになった」という声が上がったといいます。
 山下さんが同校を離れて四年になりますが、現在も同じような取り組みが続けられているそうです。

生徒が健康長寿策を提案

 茨木高校二年生の発表もありました。
 昨年11月、市内の高校生や大学生、若い社会人グループの計八チームが参加し、三〇年後の茨木市の政策立案コンテストで最優秀賞に輝いた同校女子チームによる「美食遺産」も披露されました。
 「美食遺産」は「きちんとした食事をとることの大切さや、新鮮な食材を食べられることのありがたさを学んで、健康を実感し、茨木市全体の農業の需要を高めたい。健康長寿、地産地消ランキング日本一にしようというプロジェクト」です。
 具体的には、茨木高生徒が考えたレシピを地域の小学生に教えていっしょにつくるという「小さな料理人計画」、茨木高園芸部が指導して生ごみリサイクルの土で無農薬栽培の野菜づくりを体験する「ホームガーデン政策」、農園や宿泊施設、調理施設、子どもたちが遊べるアスレチック施設などを備えた「教育ファーム」の建設を提案しました。
 男子生徒も、自然が豊かな市北部で「アイファーム」と名づけた体験型農業施設の開設や、三〇年以上前に途切れたという寒天づくりの復活による交流の場づくりなどのアイデアを発表しました。

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*主な発表者
山下昌茂(やました・まさしげ)
三豊市教育委員会事務局学校教育課課長平成20年三豊市立上高野小学校校長となり、
その後、児童の体温正常化をめざした食育に注力し、平成25年に文部科学大臣賞の表彰を受けた。
専門は算数教育、付属坂出小学校教官・県教委主任指導主事、香川県算数部会会長、三豊、観音寺地区小学校教育研究会会長を歴任。

吉田俊道(よしだ・としみち)
NPO法人大地といのちの会理事長。菌ちゃんふぁーむ園主。1959年、長崎市生まれ。
九州大学農学部大学院修士課程修了後、長崎県庁の農業改良普及員に。
1996年、県庁を退職し、有機農家として新規参入。
1999年、佐世保市を拠点に「大地といのちの会」を結成し、九州を拠点に生ごみリサイクル元気野菜づくりと元気人間づくりの旋風を巻き起こしている。
2007年、同会が総務大臣表彰(地域振興部門)を受賞。2009年、食育推進ボランティア表彰(内閣府特命担当大臣表彰)

【免疫力UP情報】食改善し体温アップ①

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第9弾は「むすび誌2019年5月号」より第13回食育情報交換会のレポートです(全2回)。
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低体温が多かった小学生

 会では、香川県三豊市教育委員会学校教諭課を務める山下昌茂さんが、同市の仁尾小学校の校長時代に取り組んだ活動が注目されました。
 山下さんは赴任した平成23年当時を振り返り、「病気欠席が多い」と感じたといいます。
 調べてみると、122日に始まったインフルエンザによる欠席が翌年の6月まで続き、収束に7か月以上もかかりました。
 約300人の全校児童で、出席停止は延べ764人(実数251人)でした。
 「なぜこんなにからだが弱いのか」と思った山下さんは、「低体温が原因では」と直感したといいます。
 そこで実際に児童の体温を測定してみると、36.5度以上の子供が24%しかいないことがわかりました。
 一般に子どもは平熱が高く、37度とされているようですが、4人に3人もが36.5度もなかったのです。

早朝マラソンと8時間睡眠

 体温が1度下がると免疫力は30%低下するといわれます。
 「若いときは、自分で決めた目標が達成できなかったら、給料を校長に返しに行っていました」という熱血漢の山下さんは、「子どもを変えるのは現場の教員」という強い責任感の下、低体温解消のために全校で三つの対策に取り組みました。
 一つは運動によって筋肉量を増やす。
 登校してきた子どもたちに、運動場を三周走らせました。「早朝マラソンは」発達障害の症状を緩和する効果もあるそうです。
 次に、8時間の睡眠時間の確保。
 「『9時に寝なさい』と言っても守れるはずがない。守れない目標を出していくと、子どもたちは『目標は守らなくていい』となるので、『何時に寝てもいいけど、合計でこれだけは寝ようね』と言いました」
 そして最後は、充実した朝食を摂る。

低学年は自作おにぎり弁当

 児童の約70%が朝食に菓子パンを食べていました。
 保護者に聞くと「ちゃんとつくっている」という答えでしたが、子どもたちはギリギリまで寝ているので、無理やり起こされて座った食卓では、テレビを見ながらパンを食べ、すぐに出かける時間が来ると、パンを口に押し込んでジュースで流し込む―という実態が浮かび上がってきました。
 そこで子どもたちに、適切な量とバランスのとれた食事を教えるために、家から持ってきた弁当箱に給食を詰めさせる学習をして、保護者にも啓発しました。
 竹下さんが提唱する、子どもだけで、献立づくりや食材の買い出し、調理、弁当詰め、片付けまでする「弁当の日」の取り組みも行ったほか、弁当づくりの難しい低学年は、米飯給食のときに、中に入れる具を工夫しながらおにぎりをつくるという「自作おにぎり弁当の日」に挑戦しました。
 三つの対策に励んだ結果、一年間で体温が36.5度以上の子どもが24%から三倍近くも増えて68%と半数を超え、インフルエンザにかかった実人数が251人から約5分の151人に激減しました。



化学調味料やめ天然素材に

 一方、隣接している給食センターの協力を得て、さらに学校給食の改善にも取り組みました。
 NPO法人・大地といのちの会理事長の吉田俊道さんは、料理のときに捨ててしまいがちな野菜の皮や芯、成長点こそがミネラルやビタミンの宝庫と説き、この日の会でも講演しましたが、センターの栄養士や職員らを連れて、地元で開かれた吉田さんの講演会に参加した山下さんは、まず給食の調味料を変えることを思いつきました。
 具体的には、化学調味料をやめ、ミネラル豊富な九州のアゴ(トビウオ)と地元のイリコ、昆布、シイタケの粉末を混合した「元気だし」を中心に使用することにしました。小魚を粉末にすることで、丸ごと使った材料になりました。
 使い始める前には吉田さんを学校に招き、食についての親子勉強会を開きました。
 ある女子中学生から「汁の中にジャリが入ってる」という苦情が寄せられたときには、栄養士が説明にあたりました。
 それまでは、イリコだしをとったあとはイリコを取り除くという作業が必要でしたが、粉末にして入れればそれで終わりなので、手間の削減にもつながりました。

最初のひと口は百回噛みで

 子どもたちの食べ方も次のように見直しました。
 ・最初に「いのちをいただきます」とあいさつをす
 ・まず牛乳をひと口だけ飲んで、栓をする
 ・野菜を口に入れて箸を置き、100回噛む
 ・あとは30回噛むことを守って食べる
 
 「野菜を先に食べるのは、血糖値の上昇を抑えるなどのため」と山下さん。
 100回も噛むのは大人でも大変ですが、1年生には「あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す」を10回唱えるようにというコツを示したそうです。
 最初に100回噛むと、あとの30回がたやすくできるようになります。
 職員からは「100回も噛ませていたら、給食時間が伸びそう」「食べ残しが増えるのでは」と心配する声がありましたが、結果的には給食時間が7分縮小して休み時間が増え、食べ残しはほとんどありませんでした。
 また、子どもたちに食べることの楽しさを知ってもらい、食への意識を高めてもらおうと、「食レポ」をさせる学習にも取り組みました。
 どんな味なのか、どうやって調理したのか、調味料は何か、食べものの旬はいつかなど、感性や表現力を育てるためにも、見えない感覚を言葉で伝える訓練を重ねました。

【免疫力UP情報】食改善し体温アップ②へ
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*主な発表者
山下昌茂(やました・まさしげ)
三豊市教育委員会事務局学校教育課課長平成20年三豊市立上高野小学校校長となり、
その後、児童の体温正常化をめざした食育に注力し、平成25年に文部科学大臣賞の表彰を受けた。
専門は算数教育、付属坂出小学校教官・県教委主任指導主事、香川県算数部会会長、三豊、観音寺地区小学校教育研究会会長を歴任。

吉田俊道(よしだ・としみち)
NPO法人大地といのちの会理事長。菌ちゃんふぁーむ園主。1959年、長崎市生まれ。
九州大学農学部大学院修士課程修了後、長崎県庁の農業改良普及員に。
1996年、県庁を退職し、有機農家として新規参入。
1999年、佐世保市を拠点に「大地といのちの会」を結成し、九州を拠点に生ごみリサイクル元気野菜づくりと元気人間づくりの旋風を巻き起こしている。
2007年、同会が総務大臣表彰(地域振興部門)を受賞。2009年、食育推進ボランティア表彰(内閣府特命担当大臣表彰)

【免疫力UP情報】子どもの食の悩みを食行動学で解くと・・・②

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第8弾は「むすび誌2017年6月号」特集 ”食行動は変えられるか” より 子どもの食の悩みについて山中祥子先生のインタビューです(全2回)。
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母親が嫌いなものは子どもも嫌いになりやすい

「好き嫌い」に関連して、子どもは周りの大人たちの反応をよく観察し、大人の反応に合致した食べ方をする、という話もうかがいました。
 米国の研究ですが、ある赤ちゃんにトマトジュースとオレンジジュースを交互に与えたところ、オレンジジュースをよく飲んだ日があったかと思うと、別の日はトマトジュースをよく飲むなど、嗜好にばらつきがみられました。
 調べると、ジュースを飲ませているベビーシッターの学生が、どちらのジュースが好きかによって、赤ちゃんのジュースの好みが変化していたことがわかりました。
 例えば、トマトジュース好きの学生がオレンジジュースを与えた場合、トマトジュースのときとは違った、学生のちょっとしたしぐさや表情の変化を赤ちゃんは敏感に感じ取り、それが食行動に影響して、オレンジジュースを積極的に飲もうとしなかったと考えられるのです。
 山中さんが「しゃべる、しゃべらないという以前に、ノンバーバル(非言語)なコミュニケーションがあり、自分の思っていることや考えていることが態度に出てしまうので、気をつけなさい」と学生に話すというのも、もっともなことです。
 「お母さんの好き嫌いが子どもにも伝染するとよく言われるのは、まずお母さんが、自分が嫌いなものは食卓に出さない、ということがあります。また、頑張って出したとしても、お母さんだけ食べなかったりとか、食べても少しだったりすると、子どもは『なんでお母さんは食べないのか』と警戒し、先ほどの赤ちゃんのように、あまり積極的に食べなくなってしまうこともあります」
 好き嫌いにはさまざまな要因が絡んでいますが、山中さんは「やっぱり経験が大きい」と話します。



食卓が〝楽しい〟ことが〝おいしい〟につながる

 
一人で食べることは「個食」や「孤食」などと否定的にとらえられがちですが、山中さんは「実は一人でじーっと食べることに集中して食べた方が、食物そのもののおいしさについては、より強く感じることができるのではないか」と考えています。
 さびしさを感じさせる「孤食」は、「一人で食べるより、だれかといっしょに食べる方がおいしい」という考え方に通じます。でも本当に「だれかと食べる方がおいしい」のでしょうか。
 山中さんら3人の食行動学研究者は、共同で実験をして論文をまとめました。その結果わかったのは、「だれかと食べると常においしいというわけではない」ということでした。
 例えば、居酒屋で気のおけない友人らと飲食をともにして、さほど「まずい」と感じないのは、食べものの味自体を「おいしい」と判断したというよりも、その場の楽しさを投影したためだというのです。
 ということは、「おいしい」と感じるためには、どんな状況で食べるかということが重要になります。だから「家庭での食卓が楽しいというのはすごく大事なこと」なのです。
 「それこそ有機野菜を使い、手づくりでだしをとってと、どんなに栄養が整った食事をお母さんが頑張ってやっていても、食卓の場面が常に楽しくなかったら、その子はおいしく食べることができません」
 食事中に、テストの結果をとやかく言われたり、怒られたりすると、子どもはてきめんに嫌な気分になるでしょう。その「嫌な気分」がそのとき食べていた食べものの「好き嫌い」の原因になることもあるので、注意したいものです。

健康を志向しすぎると不健康な結果を招くことがある

 同じ食べものでも、その場の雰囲気で「おいしさ」が変化するという話があったように、「おいしい」というのは「ものすごくあいまいな概念」だと山中さんは言います。
 「とくに人間は認知で食べている部分が大きいので、有機野菜といわれれば『おいしい』と感じる人もいます。実際においしい場合もあると思いますが、目隠しして食べた場合に、有機野菜とそうでない野菜の区別がつけられないことは多いのです。そういう意味で『認知で食べること』に重点を置きすぎると、不健康につながる場合もあるのです」
 食行動研究の第一人者といわれる米国人心理学者のポール・ロジンは、次のような設問を考えました。
 「あなたはオレンジの木がある無人島に行こうとしています。ホットドッグ、チョコレート、バナナ、アルファルファ(またはホウレンソウ)の中から1種類だけ持って行けるとしたら、あなたは何を選びますか?」
 もしかしたら、健康志向の強い人はホウレンソウを選ぶかもしれません。しかし、オレンジとあと1種類で生き長らえないといけない、というサバイバル問題であると冷静にとらえれば、カロリーが高く保存性の高いチョコレートを選ぶのがもっとも賢明な選択でしょう。
 健康を志向しすぎると不健康な結果を招くことがあるという、認知のゆがみによって生じるパラドックス(逆説)を示す好例の一つです。

“引き算”の日本食を味わうには一定の訓練が必要
 
 たくさんある食べものの「おいしさ」を感じるためには、それなりの訓練が必要です。
 簡単にいえば、ニンジンを食べなければニンジンのおいしさはわかりません。
 「野菜を食べ慣れていない人は、たぶん野菜の味がわかっていないのだと思います。そうすると、健康にいいとわかっていても食べたくない。だけど野菜のおいしさがわかっている人は食べられる。玄米のおいしさがわかっている人は玄米を食べられます」
 山中さんによると、洋食に比べてとくに日本食の場合は、その訓練がより求められるそうです。
 「日本食が洋食と違うのは、引き算の文化なんです。だしの味がわかるためには、ある程度、味覚が研ぎ澄まされていないといけません。だから、トレーニングせずに感覚が鈍いままだと、おいしさがわからない。だけど洋食は足し算の文化なんです。足し算の場合は、トレーニングがなくてもおいしさがわかる。だから簡単なんです」
 トレーニングというと、例えば、ある程度の空腹状態を保つことができる、味覚を含めた感覚を研ぎ澄ます、などが考えられますが、山中さんの言うように「トレーニングができればおいしくなる。単純にいえばそれだけですが、これだけ簡単に、すぐに魅力的な食べものが手に入る環境では、なかなかそれができない」のが現実です。

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山中祥子(やまなか・さちこ)
池坊短期大学准教授。博士(新医学)。神戸松蔭女子学院大学人間科学部と京都橘大学人間発達学部でそれぞれ非常勤講師も務める。1991年、同志社大学文学部心理学専攻卒業。3年間の民間企業勤務のあと半年間、フランスに留学。97年に神戸松蔭女子学院短大入学。出産、休学を経て、2000年に同短期大生活科学科食物栄養学専攻卒業、栄養士免許取得。2002年に管理栄養士免許取得。05年に神戸松蔭女子学院大学生活学科助手を務めたあと、神戸女学院大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了、同志社大学分化学研究科博士後期課程修了。池坊大学には10年に着任し、製菓衛生師を目指す学生に公衆衛生学、食品衛生学、食品額などを指導している。

【免疫力UP情報】子どもの食の悩みを食行動学で解くと・・・①

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
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過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第8弾は「むすび誌2017年6月号」特集 ”食行動は変えられるか” より 子どもの食の悩みについて山中祥子先生のインタビューです(全2回)。
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離乳食のときはいろんな食べものを 〝根気よく〟与えてみる

 「とくに大事なのは離乳食のとき」と山中さんは話します。
 その頃の赤ちゃんは、手や目にふれたものを、片端から何でもつかんで口に入れようとします。「食べものかどうかを確認する作業の名残」です。
 雑食性の動物は、【食物新奇性恐怖】と【食物新奇性嗜好】という、相矛盾する行動傾向をもっています。
 食物新奇性恐怖というのは、食べたことのない食物の摂取をためらうことです。食物新奇性嗜好はその逆で、食べたことのない食物を積極的に摂取しようとすることを指します。その相矛盾する行動傾向が「雑食性動物のジレンマ」と呼ばれるものです。
 山中さんは、離乳食のときにお母さんがあげなかったものは、食物新奇性恐怖からその後も食べようとしなくなる可能性があるので、「とにかくいろんなものをあげなさい」とアドバイスします。
 コツとしては、1回でダメだったとしてもあきらめず、日をおいて同じものを与えるなど、根気よく繰り返してみることです。赤ちゃんは気まぐれなので、その食べものが好きか嫌いかではなく、単に暑かったり寒かったりという理由だけでもそっぽを向いてしまうことがあるからです。
 お母さんの方も、「せっかくつくったのに」と思わず、「食べなくてもいい」くらいの気持ちで余裕をもっていれば、子どもが食べなくてもイラつくことがなくなります。

下に新聞紙を敷き 〝手づかみ食べ〟を どんどんさせましょう

 口の周りや着ているものだけでなく、周囲を汚してしまう「手づかみ食べ」。中には眉をひそめる大人もいますが、山中さんは「どんどんさせましょう」と説きます。
 手づかみ食べをすることで、赤ちゃんは、手の感覚や口から食べものまでの距離感などを養います。それがひいてはスプーンを握ったり箸を持ったりするときに役立ちます。
 また、食べものの「熱い・冷たい」「軟らかい・硬い」などの違いを、口とともに認識します。
 そうした手づかみ食べの大切さがわかれば、「行儀が悪い」「汚い」と悩むこともなくなります。そうはいっても、床が汚れれば掃除が大変ですから、あらかじめ下に新聞紙を敷いておくなどしておけば、怒らなくてすみます。
 「余裕をもって子育てをするためには、ある程度、先のことを想定しておかないといけません。私はよく学生たちに自分の失敗談を話しますが、これは、私の失敗談を聞くことで『そんなこともあるんだ』とわかってもらうためです。このような疑似体験を通じて、怒らないための工夫ができるようになればいいと思っています」




「おなか空いたー」は苦手なものを克服するチャンス


 「好き嫌いをなくすにはどうしたらいいのか」という問いは、古くて新しい悩みです。
 仕事などであわただしく帰宅した途端、子どもに「おなか空いたー」と泣かれることがよくあります。そんなとき、みなさんはどうしていますか。
 同じような経験がある山中さんは「そこでつい〝赤ちゃんせんべい〟をやってしまうというようなことになるんですよね。でも、それをやってしまうと赤ちゃんはお腹がいっぱいになってしまいます。いっぱいにはならないにしても、次に食べるものは絶対においしくなくなります」と指摘します。
 甘い砂糖水を用意して、数分ごとに少量の砂糖水を口に含んでもらうという、心理学の実験があります。一人は含んだ砂糖水を吐き出してもらい、別の一人はそのまま飲み込んでもらいます。
 そうして1時間以上も続けると、吐き出した人は「甘くておいしい」という最初の感覚が維持されるのに対し、飲み込んだ人はだんだん「おいしい」と感じなくなります。
 たとえ少量であっても、栄養価やエネルギーとしてからだの中に入れば、血糖値が上がります。血糖値が上がれば、人は食欲が収まるよう反応します。
 「いつまでもおいしかったら、食べることがやめられないので、おいしさが低下するようにからだができています。それはものすごくよくできた自然の摂理です」
 実際には満腹になっていなくても、何かエネルギーになるものを少しでも口にすれば、おいしさはどんどん低減されていきます。これは【感性満腹感】という食行動学の理論だそうです。
 その理論を応用して、お腹を空かせて泣いている子どもに対しては、おやつをあげるのではなく、それまで苦手だったものを与えると、「『意外とおいしい』と思うようになるかもしれません」と山中さん。
 「ただし、あまりに空腹すぎて『おえっ』となるときもあるので、その限度は見極めてほしい。ちょっとお腹が減ったときにちょっと苦手なものを先に与える、というのがポイントです」
 西洋のことわざにあるとおり「空腹は最高の調味料」です。

もともと嫌いなピーマンは無理強いせず、ほかの野菜に“置き換える”

 「好き嫌い」に対処するには、別のやり方もあります。
 山中さんがとくに栄養学を学ぶ学生に話すのは、「置き換えてみる」ということです。
 例えば、ピーマンが嫌いな子どもは珍しくありません。それは一つには、ピーマンのもつ苦味に原因があります。生物にとって苦味や酸味は、毒や腐敗などの危険性を予感させるものであるため、子どもがこれらの味を避けようとするのは、実は理にかなった自然な行動なのです。
 そのことがわかれば、子どもがもともと避けようとする苦味をもつピーマンを無理強いしなくても、ピーマンに含まれるビタミンAなど同じ栄養素が入っているほかの野菜に置き換えてみるといいのです。
 「最初からいきなり苦味のあるピーマンを食べさせようと、ハードルを上げる必要はありません。あえてチャレンジャーなことをするよりは、甘味の強いカボチャやニンジンなど、とっつきやすいところからやればいいのです。甘味は苦味とは逆に、生まれつき好まれる味なので、うまくいきやすいのです」
 苦味についても経験を積んでいくうちに、子どもは毒ではないと理解していきます。
 そして、もし少しでもピーマンを食べることができれば、子どもをほめることも効果的です。「『ピーマンを食べられたんだ!スゴイ』と言われたら、子どもは『ボクってちょっとスゴイ』と、気を良くして食べるようになります」
 ピーマンは切り方にもコツがあります。横に切ると苦味やにおいが強くなるので、縦に切って苦味を和らげるのもいいでしょう。

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山中祥子(やまなか・さちこ)
池坊短期大学准教授。博士(新医学)。神戸松蔭女子学院大学人間科学部と京都橘大学人間発達学部でそれぞれ非常勤講師も務める。1991年、同志社大学文学部心理学専攻卒業。3年間の民間企業勤務のあと半年間、フランスに留学。97年に神戸松蔭女子学院短大入学。出産、休学を経て、2000年に同短期大生活科学科食物栄養学専攻卒業、栄養士免許取得。2002年に管理栄養士免許取得。05年に神戸松蔭女子学院大学生活学科助手を務めたあと、神戸女学院大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了、同志社大学分化学研究科博士後期課程修了。池坊大学には10年に着任し、製菓衛生師を目指す学生に公衆衛生学、食品衛生学、食品額などを指導している。

【免疫力UP情報】食行動は変えられるのか②

【免疫力UP情報】
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過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第7弾は「むすび誌2017年6月号」より「食行動は変えられるか(山中祥子先生のインタビュー)」です(全2回)。
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食器を使い野菜摂取を増やす 研究が進むアメリカの試み

先の「抑制の逆説的効果」からもわかるように、意識的に行動を変えることには限界があります。そこで本人の潜在的態度に訴えていけば、意識することなしに、結果的によりよい選択ができるよう誘導していくことが可能です。
 例えば、食行動学研究が進んでいるアメリカでは、食器を利用して、意識せずに食べる量をコントロールして肥満を解消しようという試みがあります。
 一つの皿を用意します。その皿は、まん中に仕切りがあり、半分に分割されています。さらに片方だけにまた中央に仕切りがあります。つまり、皿は4分の1のスペース2つ、2分の1のスペース1つに区切られています。
 3つに区切られた皿に、「半分のところに野菜を、4分の1のところにそれぞれタンパク質(肉、魚、大豆、卵など)とデンプン類(米、イモ、カボチャなど)を盛るように」と指導します。すると、いちばん大きなスペースに盛られる野菜の量が増えて摂取量も増えるようになる、というわけです。
 これは私たちが、無意識に大きなお皿にはたくさん盛りつけ、小さなお皿には少なく盛りつける、といったように、スペースに応じて盛りつける量を調節するという行動傾向を利用したものです。
 つまり、皿の大きさを変化させることにより、食事の全体の量もある程度コントロールできるということになります。

同じ実験をして効果得られる 「色があったらもっと増えたかも」

 
山中さんも、同じような皿を用意して実験しました。研究室では調理ができないので、調理済みのカット野菜(「レタスミックス」とコールスローの2種類)、空揚げ、ポテトサラダ、ピラフを並べて、最初は自由に盛りつけてもらいました。
 それから一定期間をおき、2回目は「半分のところ(もっとも大きなスペース)には、必ず野菜を盛るように」という条件をつけました。
 実験に協力した人のうち、30代の男性は、1回目では半分のスペースに空揚げとピラフを盛りつけました。2回目は、同じところに野菜と空揚げでした。6個という空揚げの数は変わりませんでしたが、野菜の量が増え、ポテトサラダもいくらか多く盛りつけられていました。
 盛りつけるスペースを大きな方に指定しただけで、全体として野菜の量が多くなったのです。
 実験に参加した人からは、ブロッコリーの緑やプチトマトの赤など「色がほしかった」という声もあり、山中さんは「日本人は色彩を大切にする民族なので、もし、もう少し色とりどりの野菜があったら、トータルの野菜摂取量はもっと増えたかもしれません」と話します。
 野菜を食べることの栄養的な利点を説いてたくさん食べるよう指導したのではなく、単に野菜を広いスペースに盛るように指示しただけで、野菜の摂取量を増やすという目標が達成されたのです。
 このようなことを繰り返すことで、大きなスペースに野菜を盛りつけることを習慣づけることができれば、知らず知らずのうちに野菜をたくさん食べるようにもなると考えられます。
 ただ、和食の場合は、ワンプレートに盛りつけるのには不向きなところがあるので、工夫が必要です。



買い食いをさせないためにコンビニのない帰宅ルートで

 こうした、食器などの食行動をとりまく環境要因をコントロールすることで食行動を改善する他の方法として、山中さんは「買い食いをさせないパターン」の知恵も披露しました。
 ジャンクフードやお菓子などを控えて家でちゃんとした食事をさせたいとして、帰宅途中にコンビニに寄って買い食いをするのをやめさせたいと思えば、まずコンビニの前をとおらないルートに改める。それが無理ならお金を持たせないようにする。買い置きをやめる―など「周りから攻めていく」ことで解決を図ります。
 見逃せない環境要因として、経済事情もあります。
 「去年の国民健康栄養調査で、野菜と肉の摂取量は高所得者に多く、糖質の摂取量は低所得者に多いという結果が出ていました。お金のない人は、安くてお腹がある程度ふくれる菓子パンやカップラーメンといった糖質を多く食べる傾向があります。健康的な食行動に変えるためには、経済格差をなくし、摂取量を増やしたい野菜などの価格を下げることが、本当は一番だと思います」
 英国では、国が食品メーカーを強く指導して減塩運動を展開、塩分摂取量の削減に成功したことがありますが、いまの日本では、即効性のある経済格差の是正や食品業界への圧力といった施策は、現実的ではありません。

環境要因を改善することで食行動を良い方向にみちびく

 
もちろん顕在的態度にアプローチすることも大切ですが、本人が気づいたときはすでに手遅れ、となってしまう心配もあります。
 環境要因をコントロールして潜在的態度にはたらきかけることで、本人が自覚しないうちに行動をいい方向に変化させることができれば、その成果は大きなものがあります。
 「例えば、日本では乳がん検診があまり進んでいません。検診がいいというのはわかっていても、検診にお金がかかるとなると行きにくくなるので、無料にすることはある程度効果があると思います。また羞恥心という点を配慮し、女医さんを増やすというのも、(検診率を上げるためには)ものすごく効果があると思います」
 「周りがどれだけハードルを下げてあげられるか。本人の意識の問題以上のところで変えていかないと」と、環境要因の改善の必要性を力説する山中さんですが、こと食に関しては「あまりヘルシーとか美とか言い出すと、やせすぎるなどそっちの方向へ行ってしまう。そうすると認知がゆがんでしまい、摂食障害など別の問題が生じる可能性があり、食は難しい」とため息をつきます。
 食行動学の研究がもっとも進んでいるといわれるアメリカですが、文化や生活風習の違いもあり、同国での研究の成果がそのまま日本で生かせるわけではありません。
 山中さんは、苦労しながらも実験による試行錯誤を繰り返しては、例えばスマートフォンのゲーム感覚のようなやり方など、潜在的態度にはたらきかけて実際の行動の変化につなげる効果的な方法を探っています。

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山中祥子(やまなか・さちこ)
池坊短期大学准教授。博士(新医学)。神戸松蔭女子学院大学人間科学部と京都橘大学人間発達学部でそれぞれ非常勤講師も務める。1991年、同志社大学文学部心理学専攻卒業。3年間の民間企業勤務のあと半年間、フランスに留学。97年に神戸松蔭女子学院短大入学。出産、休学を経て、2000年に同短期大生活科学科食物栄養学専攻卒業、栄養士免許取得。2002年に管理栄養士免許取得。05年に神戸松蔭女子学院大学生活学科助手を務めたあと、神戸女学院大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了、同志社大学分化学研究科博士後期課程修了。池坊大学には10年に着任し、製菓衛生師を目指す学生に公衆衛生学、食品衛生学、食品額などを指導している。

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【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
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第7弾は「むすび誌2017年6月号」より「食行動は変えられるか(山中祥子先生のインタビュー)」です(全2回)。
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高校生で心理学に興味をもつ 管理栄養士から大学院へ進学

画用紙に木の絵を自由に描かせて、実や葉のつき方、枝ぶりなどからその人の心理状態や性格を診断する「バウム・テスト」と呼ばれる手法があります。山中さんは高校生のときにそのテストのことを知って心理学に興味をもち、同志社大学で実験心理学を中心に学びました。
 大学を卒業後、いったん就職し、半年間の留学を終えて帰国した日本では、婚約者だった貴乃花と破局した宮沢りえの〝激やせ〟が大きな話題になっていました。
 山中さんは、明らかに摂食障害を起こした若い女優の姿を見て、「失恋がきっかけで摂食障害になっている人は、意外に多いのかもしれない」と思ったといいます。
 その頃に自身の食生活も見直そうと考えた山中さんは、神戸松蔭女子学院短大で栄養学を学び始め、最終的に母親と同じく管理栄養士になりました。
 食行動学という研究に取り組んだきっかけは、たまたま神戸松蔭女子学院大学の生活学科で1年間、助手として勤務した際に、「大学で学んだ心理学と栄養を生かして、大学院でさらに勉強してはどうか」という同じ生活学科の教授からのアドバイスでした。
 「いまの私があるのは、心理学と栄養学の二つの領域を専門にしているからこそだと思いますし、本当に感謝しています」

さまざまな要因が絡む食行動 指導したことと反対の結果も

 
食行動学というと仰々しく聞こえますが、山中さんによると心理学研究の中では「あまりメジャーではない」そうです。
 というのは、食べもの一つをとってもさまざまで、いろんな要素が含まれて「要因の統制がしにくい」という難しさがあるからです。
 当然、人の食行動を変えることも一筋縄ではいきません。
 例えば、糖尿病患者に対して、「ケーキを食べると血糖値が上がりすぎるので、ちょっと控えて下さいね」と言ったとします。
 ケーキを我慢しようとすればするほど、ケーキが食べたくなる―。似たような経験はだれもが一度はあると思います。かなり意志の強い人なら我慢することができるかもしれませんが、たいていは、逆に我慢しようとすればするほど欲求が高まってしまい、我慢することができません。
 これは、心理学で【抑制の逆説的効果】と呼ばれるもので、「『シロクマのことを考えないで下さい』と言われると、シロクマのことが頭から離れなくなってしまう」という、米国人心理学者のウェヴナーが行った有名なシロクマ実験によって示されたものです。

高学歴ほど多い摂食の悩み しかし食行動は変えにくい

 
山中さんが、どうすれば食行動を変えられるのか、と考えるのには、切実な背景もありました。
 食行動がおかしくなり、進行するとだんだんと病的な状態に陥ります。その一つが摂食障害ですが、山中さんは「摂食障害は疾病として扱われるため、医学分野での研究が多いのです」と話します。
 摂食障害は、深刻な状態になるとときには生命にかかわりますが、医療機関で治療への道が開けます。
 ところが、たとえ摂食障害であっても医療機関へ行かない限りは、摂食障害と診断されることはありません。このような「グレーゾーン」の人たちは現実にはかなり多く、一人で苦しんでいるのが現状です。
 「実際、私がある女子大学で学生のデータをとったときでも、摂食障害傾向の強い子たちが30%ぐらいいました。ふつうに調べても10%くらいいると思います。先進国ではとくに高学歴の女性に多いと言われています」
 「そんなにもたくさんの女性が食べることに悩んでいるのか」と驚かれるかもしれませんが、「現在は、過食の中でも、単に食べすぎるのではなく、過食と嘔吐を繰り返すパターンの患者さんが多くなっています。この場合、その人は太ってもいないしやせてもいないしで、外見からではわかりにくい」のです。
 摂食障害など病気と診断された人たちへの対応はもちろん、近い将来にそうなる可能性のある大勢の予備軍の人たちに対しても、目を向けていく必要があります。
 ところが、「健康のために」といくら説明しても、「それは若い人には通じません。たとえ若くなくても、不具合が出ていない人には伝わらない。そのことは管理栄養士時代に嫌というほど思い知りました」というのが現実でした。
 そこで山中さんは「できれば病気ではない人の食行動も含めて変えたい」と考えたのです。

意識できる「顕在的態度」と意識できない「潜在的態度」

 
では、具体的にどうすれば人の行動は変えられるのでしょうか。
 私たちの行動は「態度」によって決定づけられます。その態度には、意識できる【顕在的態度】と意識できない【潜在的態度】があり、両方の態度が行動に影響します。それぞれの特徴を山中さんは以下のように指摘しました。

【顕在的態度】
 ・いろんな情報を吟味、熟慮して、論理的な思考で結論が導かれる
 ・意識して途中で変えることができる。意図的である
 ・情報の精査に時間がかかるので非効率的
 ・(一例として)ケーキを見ると、「生クリームたっぷりで高脂肪・高カロリー」と認識し、「いまは減量中だから食べてはいけない」と、我慢する行動に出る

【潜在的態度】
 ・意識できない、直感みたいなもの
 ・コントロールしにくい
 ・非常に処理が速く効率的
 ・(一例として)ケーキを見ると「快」の感情が生じて「おいしそう」と思い、「食べたい」という欲求が引き起こされ、食べるという行動が起きる

 これまでは、顕在的態度ばかりに訴えることが中心でした。しかし個人の意識に直接はたらきかけて理想の行動をうながすのは限界があり、シロクマ実験が示すように、ときには逆効果さえ招きます。
 そこで山中さんが注目したのが潜在的態度です。



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山中祥子(やまなか・さちこ)
池坊短期大学准教授。博士(新医学)。神戸松蔭女子学院大学人間科学部と京都橘大学人間発達学部でそれぞれ非常勤講師も務める。1991年、同志社大学文学部心理学専攻卒業。3年間の民間企業勤務のあと半年間、フランスに留学。97年に神戸松蔭女子学院短大入学。出産、休学を経て、2000年に同短期大生活科学科食物栄養学専攻卒業、栄養士免許取得。2002年に管理栄養士免許取得。05年に神戸松蔭女子学院大学生活学科助手を務めたあと、神戸女学院大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了、同志社大学分化学研究科博士後期課程修了。池坊大学には10年に着任し、製菓衛生師を目指す学生に公衆衛生学、食品衛生学、食品額などを指導している。