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【免疫力UP情報】腸荒れはなぜ引き起こされるのか?⑥

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第5弾は「むすび誌2019年3月号」~「むすび誌2019年8月号」までの連載より「腸荒れはなぜ引き起こされるのか?(岡部賢二∥作)」の記事です(全6回)。
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強力な放射線が元素の結合を破壊する

 腸荒れが引き起こされる原因の一つに放射性物質の問題があります。
 度重なる原爆実験や原発事故により、大量の放射性物質が環境中に放出されました。福島第一原発からは今でも放射性物質が漏れ続けており、自然界だけでなく、体内の環境汚染も広がっています。
 では、なぜ放射性物質が問題なのかというと、人体の細胞に多大な影響を与えるからです。
 我々の体を構成する細胞は、炭素や水素、酸素、窒素などの成分が結合してできています。
各元素を結びつけているのは電子(マイナスエレクトロン、マイナス水素電子や自由電子とも呼ばれる)で、数電子ボルトという微弱な電気エネルギーによって電子結合しています。
 ところが、放射性物質から発せられるガンマ線などの放射線は、その数十万~数百万、場合によっては数千万電子ボルトというとてつもないエネルギーで電子を吹き飛ばし、ないしは奪ってしまうのです。
 電子が奪われると電子結合していた元素がバラバラに崩壊していきます。
これを電離作用といい、タンパク質から構成される遺伝子の結合が崩壊すればガンや先天性障害が、酵素やホルモンが破壊されると老化現象が引き起こされます。

影響受けやすい子ども 内部被ばくで免疫不全
 放射線の影響を一番受けるのが新陳代謝の早い成長期の細胞なので、大人よりも子供や胎児の方が被害を受けやすくなります。60歳の人の放射性感受性を1とすると、3か月齢胎児では30000にもなります。
 そして、臓器の中で新陳代謝が活発なのが皮膚や甲状腺、生殖器、腸壁で、中でも小腸の絨(じゅう)毛は2〜3日で生え変わります。千島喜久雄医学博士が唱えた腸管造血説では、血液は絨毛で作られているとされているので、ここが破壊されると造血しづらくなり、さまざまな不調につながります。
 また、大腸の粘膜に棲んでいる腸内細菌や粘膜それ自体もタンパク質でできているため、食物や水とともに体内に侵入した放射性物質によって破壊される危険性があります。
 これを内部被ばくと言い、症状としては下痢や血便、貧血、免疫不全などがあげられます。さらに腸のバリアが弱まることでウイルスが侵入しやすくなり、感染症のリスクが増します。

発酵食品で電子を補充 腸荒れを防止する
 この放射性物質による電離作用から腸を守ってくれるのが発酵食品です。
 微生物は発酵によって電子を供給(還元)してくれますが、腐敗状態では反対に電子が失われていきます(酸化)。腸内にいる善玉菌は発酵菌であり、自ら電子を補給する発電の働きを担っています。
 ところが、腸内が腐敗状態になると、電子が消失することで電離作用が進み、腸壁がただれたり、ヒビが入ったり(リーキガット症候群)といった症状が現れます。
 こうした状態を防ぐためには、味噌や醤油、酢、みりん、塩こうじ、甘酒、漬物などの発酵食品を補うことです。
 これらの発酵食品から電子(マイナス水素電子)を補充できれば、腸荒れを防ぐことができます。実際、伝統製法の梅干しやみそ汁で長崎や広島の原爆による被ばくから生還した方々もいます。

食物繊維や発酵食品で短鎖脂肪酸増え健康に
 大腸には腸内細菌の95%が棲(す)んでいますが、そのほとんどが嫌気性菌(酸素を嫌う菌)です。
代表的な嫌気性菌はビフィズス菌や酪酸菌ですが、これらの菌は水素が好物で、電子(マイナス水素電子)の供給量を大腸内に増やしてあげると元気になるのが特徴です。
 ということは、水素電子を豊富に含む食物や水を大腸内に送りこむことができれば、腸内環境が整い、内部被ばくの害から身を守ることが可能になります。
 酪酸菌は穀物に含まれる食物繊維(セルロース)やコンニャク、海藻類、きのこ類、寒天、葛(くず)、オリゴ糖といった難消化性多糖体を供給してあげると、それをエサにして短鎖脂肪酸を作りだします。
 短鎖脂肪酸には、腸内の表皮の新陳代謝を良くして弱酸性の環境に保ち、粘膜を保護することで便秘や下痢を改善したり、ミネラルの吸収を良くしたり、腸内に侵入してきた菌を抗菌したり、腸内細菌のバランスを整えたりといった働きがあることがわかっています。
さらにガンや糖尿病、肥満やアレルギーなどの免疫疾患、感染症の予防などの優れた機能があることが報告されています。
 短鎖脂肪酸を増やすためには、難消化性多糖体を含む食品を補うほかに、発酵食品を食べることによって電子(マイナス水素電子)を補給することが大切です。
 これらの食品を日々の食卓に取り入れ、放射性物質の害から腸内を守りましょう。


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岡部賢二(おかべ・けんじ)
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。著書は「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをきれいにするマクロビオティック」(PHP研究所)、「家庭を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)

【免疫力UP情報】腸荒れはなぜ引き起こされるのか?⑤

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第5弾は「むすび誌2019年3月号」~「むすび誌2019年8月号」までの連載より「腸荒れはなぜ引き起こされるのか?(岡部賢二∥作)」の記事です(全6回)。
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善玉菌2割、悪玉菌1割 日和見菌7割で健全に
 腸内環境を悪くする原因の一つに悪玉菌の増加があります。
 健全な腸内には善玉菌が2割、悪玉菌が1割、日和見菌が7割の比率で存在すると言われています。
ところが、悪玉菌が善玉菌以上に増えてしまうと、日和見菌は腸内で優勢になった悪玉菌に味方するようになり、腸内環境が悪化します。
 悪玉菌には好物となるエサがあり、それが脂肪とタンパク質です。
これらの高分子の成分は善玉菌ではなかなか分解できないため、悪玉菌の力を借りて代謝する必要があるのですが、その分解過程で排気ガスに相当するようなインドールやスカトール、フェノール、硫化水素、アンモニア、アミンといった有毒成分が発生します。
 これらの成分の正体は、PM2.5や光化学スモッグ、酸性雨、車の排気ガスなどに含まれる有毒な窒素酸化物や硫黄酸化物です。

腐敗毒素が引き起こすさまざまな不快症状
 腐敗毒素のインドールやスカトールは悪性リンパ腫や白血病を、アミンは胃の中で硝酸と結びつくとニトロソアミンという強力な発がん物質(胃がんや大腸がんの原因物質)に変化します。
 なかでも硫化水素やアンモニアは特に有害で、放置すると腸壁がただれるため、肝臓で尿酸に変えて腎臓から尿素として体外に排泄(せつ)されます。
 肝臓や腎臓が元気に働いてくれる間は良いのですが、加齢に伴って働きが弱り、排泄力が衰えてくると、血中に尿酸が逆流して痛風や筋肉痛のような不快症状が現れます。
 そして、血液が汚れるにつれて、きついとかだるいとか疲れやすいといった疲労感や、関節に汚れがたまることで痛みや炎症が起こり、神経痛や関節炎、リウマチのような症状を引き起こすこともあります。

悪玉菌が腸壁から全身へ 炎症や感染症の原因にも
 しかし、悪玉菌にも大事な役割があり、それを攻撃したり排除するのは筋違いです。
 そもそも悪玉菌増加の原因は高脂肪・高タンパクの肉や卵、乳製品、パンといった欧米食の摂りすぎですから、低脂肪・低タンパクの食事に切り替えればよいことです。
 戦前までは健全であった日本人の腸内環境は、戦後、学校給食を通じてパンと牛乳が取り入れられた頃から悪化し始めました。
 また、悪玉菌は肉食動物と似たような性質をもっていて、われわれの腸壁を食い荒らすと言われています。それにより腸に微細な穴が開くと、そこから悪玉菌が体の中に侵入してきます。
 体の中に侵入した悪玉菌は、通常、血液内をパトロールしている白血球に見つかれば、すぐに処分されますが、腸壁に多く存在する白血球の中にこっそりと忍び込んでしまうことが稀(まれ)にあり、こうなると全身を自由に動き回るので厄介です。
やがて脳を含む全身の臓器で炎症や感染症を引き起こし、徐々に体を蝕んでいきます。したがって、食べ物の選択はとても重要になります。

便で腸内環境を判断
 善玉菌の好むエサは低分子のでんぷん(炭水化物)です。でんぷんと言っても白砂糖のような単糖ではなく、ゆっくりと時間をかけて吸収される多糖類(複合炭水化物)です。
 全世界の長寿国、長寿村の食事を調査した結果、野菜や穀物、果物、海藻、きのこ類といった複合炭水化物の摂取割合が、全体の食事の80%以上を占めていたことが報告されています。
 ということは、腸内環境の改善のためには、脂肪やタンパク質の摂取を減らし、複合炭水化物の割合を増やせばよいということになります。その点、伝統的な日本食はまさに理想的な腸内改善食と言えます。
 腸内環境の良し悪しは、便やおなら、尿、汗などの臭いでわかります。排泄物に悪臭がしたら要注意です。便の色が黒色でコロコロしていたら悪玉菌が多く、太くて長くてツヤが良く、漬物のような発酵臭であれば善玉菌が優位となっています。


定期的な夕食抜きも効果
 複合炭水化物の中でも、皮つきの穀物や野菜に含まれる不溶性食物繊維(セルロース)、里芋やレンコン、海藻、きのこ類などのヌメヌメ食品に含まれる水溶性食物繊維は、善玉菌が喜ぶエサになります。
 そして、発酵食品に含まれるビタミン類、ミネラル、アミノ酸のような発酵生成物質やオリゴ糖も腸内環境を良くしてくれます。
 さらに腸内環境を劇的に良くする手段が時々のプチ断食です。玄米甘酒や葛練り、酵素飲料を用いたプチ断食をすると、短期間に腸内細菌のバランスを整えることができます。
 腸管造血説を唱えた千島喜久男医学博士の研究によると、3日間、ニワトリに断食をさせた結果、悪玉菌がほとんどいなくなり、善玉菌が優位になったと報告されています。
 新月や満月の月の周期で夕食抜きを定期的に行うとことで、腸内環境の改善が期待できます。

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岡部賢二(おかべ・けんじ)
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。著書は「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをきれいにするマクロビオティック」(PHP研究所)、「家庭を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)

【免疫力UP情報】腸荒れはなぜ引き起こされるのか?④

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第5弾は「むすび誌2019年3月号」~「むすび誌2019年8月号」までの連載より「腸荒れはなぜ引き起こされるのか?(岡部賢二∥作)」の記事です(全6回)。
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遺伝子組み換えには2つのタイプがある
 腸荒れの原因の一つに遺伝子組み換え食品の影響があります。
遺伝子組み換え(Genetically Modified Organisms 略してGMO)には主に二つのタイプがあり、一つは殺虫毒素を持つ細菌の遺伝子が組み込まれたもので、毒素化タンパク質を作り出し、それを食べた虫の胃腸が破壊されます。
 二つ目は除草剤耐性を持つもので、除草剤によって周囲の雑草は枯れても、作物は遺伝子が組み替えられているので枯れずに残ります。
 これまで人類は優れた品種を作り出すために植物や動物の品種をかけあわせて(交配)きました。従来の方法は同じ種(稲と稲)、または近縁の種(ロバと馬など)同士のかけあわせでしたが、遺伝子組み換えは、ほうれん草の遺伝子を豚に組み込んだり、魚の遺伝子をトマトに組み込むなど、自然界では決して起こらない遺伝子操作を強制的に行います。


残留する殺虫毒素胎児からも検出
 製造元の企業は、殺虫毒素(バチルス・チューリンゲンスという微生物が組み込まれているためBt毒素と呼ぶ)は人間の腸で破壊され体外に排出されるので無害であると主張していますが、体内に有毒成分が残留することがわかっています。
 2011年にカナダで発表された報告によると、妊娠した女性の93%、胎児の80%からこのBt毒素が検出されました。原因は遺伝子組み換えトウモロコシを飼料として育てられた家畜の肉や乳製品、卵を食べることで、妊婦や胎児に残留したと考えられます。
 世界第3位の大豆輸出国のアルゼンチンで遺伝子組み換え大豆の栽培が本格化したのが2000年ですが、その2年後からガン、不妊症、死産、流産、白血病、肝臓病、免疫疾患、出生異常が急速に増えてきたと報告されています。
 なかでも、遺伝子組み換え食品の割合が非常に高いアメリカでは、遺伝子組み換え食品の出現と共にガン、白血病、アレルギー、自閉症などの慢性疾患が急増しています。

除草剤のグリホサート緩い日本の残留基準
 さらに遺伝子組み換え作物は、除草剤ラウンドアップとセットとなっており、国土の広いアメリカでは大量の除草剤が空中散布されています。
 ラウンドアップの主要な有効成分をグリホサートといいますが、ブエノスアイレス医科大学教授のアンドレス・カラスコ博士の率いる国際科学者チームの実験によると、2・03ppmの低濃度のグリホサートでカエルや鶏に奇形が見られたと報告されています。
日本では菜種の綿実で10ppm、大豆や大麦では20ppmが残留基準ですから、かなり危険度が高いと思って間違いないでしょう。
 また、グリホサートは抗菌剤としても登録されていて、腸の中の善玉菌を殺すことで、サルモレラ菌や大腸菌が増殖して腸荒れ(炎症)を引き起こすといわれています。
その結果、善玉菌が作りだしているセトロニン(鎮静ホルモン)やメラトニン(睡眠ホルモン)が不足するという指摘もあります。
 また、取り込まれた栄養素を不活性化し、吸収を阻害したり、発がんや内分泌のかく乱との因果関係が指摘されています。

伝統食品の原料にも注意
 日本は、家畜の飼料に使うトウモロコシのほぼ全量を輸入に頼っていて、その9割以上がアメリカ産です。
アメリカで生産されている9割のトウモロコシが遺伝子組み換えなので、日本に輸入されている飼料用あるいは食品加工用のトウモロコシのほとんどが遺伝子組み換えということになります。
 問題は、遺伝子組み換えトウモロコシを飼料に与えた家畜の肉や遺伝子組み換えトウモロコシを原料に使った加工デンプン(コーンスターチ)や異性化糖(コーンシロップ)のような加工食品に遺伝子表示義務がないことです。
 日本が輸入している作物で、遺伝子組み換えが許可されているものは大豆や、トウモロコシ、なたね、ジャガイモ、甜(てん)菜、綿実です。
 大豆の場合、94%が外国産で、そのうち7割がアメリカ産で、そのほとんどが遺伝子組み換えされています。大豆は味噌や醤油、納豆、豆腐、豆乳、揚げといった伝統食品の原料でもあるので、吟味し購入する必要があります。

腸壁の再生を促す断食定期的なプチ断食が有効
 遺伝子組み換え食品による腸の炎症が伝統製法で作られた発酵食品で治まったという報告があります。
 また、断食によってオートファジー(自食細胞)機能が働き、細胞内にいるお掃除細胞が活性化することもわかっています。
自食細胞は、細胞内の異常タンパク質を食べてくれるので、ガンを抑制し毒素化タンパク質の浄化が期待できます。
 体内にある3000~5000種類の生体酵素の内、ふだん消化に使われている酵素(消化酵素)は約80%といわれていますが、断食中はその消化酵素が修復や解毒に回るため、腸壁の再生を促してくれます。
 したがって、腸荒れの対策としては遺伝子組み換え食品を極力食べないようにし、定期的に甘酒などの発酵食品を用いたプチ断食がおすすめです。

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岡部賢二(おかべ・けんじ)
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。著書は「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをきれいにするマクロビオティック」(PHP研究所)、「家庭を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)

【免疫力UP情報】腸荒れはなぜ引き起こされるのか?③

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第5弾は「むすび誌2019年3月号」~「むすび誌2019年8月号」までの連載より「腸荒れはなぜ引き起こされるのか?(岡部賢二∥作)」の記事です(全6回)。
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腸荒れ起こす悪玉菌 一方で大切な働きも
 大腸内に棲息する腸内細菌は、大きく分けて善玉菌と悪玉菌、日和見菌の3つに分類することができます。その理想的な割合は、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7と言われています。
 腸荒れの原因となるのは、腐敗菌である悪玉菌の増加です。
悪玉菌が作り出すインドールやスカトール、フェノール、硫化水素、アンモニア、アミンといった窒素酸化物や硫黄酸化物によって、腸壁がただれるような状態が引き起こされます。
 しかし悪玉菌がすべて悪いかというとそうでもなくて、実は善玉菌にはできない大切な働きをしています。
それは分子量の大きなタンパク質や脂質の分解です。
 ファーストフードや、ご馳(ち)走といわれるものには、油脂やタンパク質が多く含まれています。
特に戦後、体に良いからと肉や卵、乳製品、揚げ物や炒め物の摂取量が増加し、それとともに腸内の悪玉菌も増えてきました。
 したがって、悪玉菌を攻撃するよりも、悪玉菌を必要としない食生活に戻すことが根本的な対策になります。


乳製品が苦手な日本人
 最近耳にするリーキーガット症候群のような腸荒れは、高脂肪・高タンパクの動物性食品、中でも乳製品によって引き起こされやすいということがわかってきました。
 なぜなら、液状の牛乳の場合、カゼインというタンパク質が胃で分解されず、素通りして腸に流れ込んでくるからです。
 特に日本人は、乳製品を摂取してきた歴史が浅いため、乳製品を分解する遺伝子情報がなく、90%近くの人は牛乳を飲むとお腹がゴロゴロします。

グルテンフリー実践者 米国で700万人超
 また、植物性のものにも腸荒れを起こしやすいものがあり、それが近年消費量が激増している小麦粉です。
 小麦粉に含まれるグルテンは分子量が非常に大きく、牛乳のカゼインの分子量が2万3600Da(ダルトン)とすると、グルテンは4万~数百万Daというとてつもない大きさです。これが腸に流れ込んでくると、腸壁の免疫細胞は異物が入り込んできたと判断し、総攻撃をしかけます。そして、免疫との激戦が繰り広げられた結果、腸壁は焼け野原状態になってしまいます。
 小麦粉の中でも、強力粉といわれるグルテンの多いもの、さらに遺伝子組み換えされた(海外から輸入された)ものほど腸に害が出やすいようです。
 近年、アメリカでは小麦粉製品のグルテンでアレルギーを引き起こすセリアック病が増え、アメリカ人の100人に1人がこの病気にかかっていると言われています。
 そこで小麦粉製品を食事から外したグルテンフリーを実践する人が700万人を超えています。
実際、日本でも過去に小麦粉製品を過剰に摂取していた方にアレルギーが多く見られます。

大腸に届くオリゴ糖がビフィズス菌増やす
 小麦アレルギーなどの対策としては、腸内環境の改善です。
 発酵菌である乳酸菌は善玉菌と呼ばれていて、腸内環境を良くすることで知られています。この善玉菌が最も喜ぶエサがブドウ糖(でんぷん質)です。
 ところが白米や白砂糖、精白小麦粉の場合、そのほとんどが小腸で吸収されてしまい、腸内細菌の宝庫である大腸まで届きません。
そこで不消化な食物繊維を含む玄米や雑穀、全粒粉のような食物(多糖類)が必要となります。
 オリゴ糖が体に良いと言われているのは、単糖が2個から10個結合した多糖体のため、小腸では吸収されずに大腸に届き、大腸内のビフィズス菌を増やすからからです。
 オリゴ糖はゴボウや大根、玉ネギ、大豆に豊富に含まれているので、みそ汁にそれらの野菜を入れて食べれば、腸内環境が整います。甘酒の甘味にもオリゴ糖が含まれています。

食物繊維で腸を整える
 食物繊維は別名「難消化性多糖類」とよばれ、人間の酵素では分解できません。
 穀物の皮にはセルロース、果物にはペクチン、根菜類にはリグニン、海藻にはアルギン酸といった食物繊維が豊富に含まれています。
 昔から腸の砂出しに活用されてきたコンニャクにはグルコマンナン(水溶性食物繊維)が、キノコにはベータグルカン(多糖体)が含まれています。葛(くず)粉に整腸作用があるのも、難消化性デンプンだからです。
 腸内細菌は、これらの食物繊維を原料に、人体に必要なビタミンだけでなく短鎖脂肪酸の合成をしてくれます。
この短鎖脂肪酸には、雑菌やウイルスの繁殖を防ぎ弱酸性の腸内環境を作る、発がん物質の抑制をする、ミネラルの吸収を良くする、肥満や糖尿病の予防、食欲の抑制、免疫機能の調整といった優れた作用があることがわかっています。
 まずは、高脂肪・高タンパク・高糖分の欧米食から、低脂肪・低タンパク・高デンプン・高食物繊維である伝統的な和食に切り替えましょう。きっと、腸内細菌が喜ぶはずです。

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岡部賢二(おかべ・けんじ)
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。著書は「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをきれいにするマクロビオティック」(PHP研究所)、「家庭を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)

【免疫力UP情報】腸荒れはなぜ引き起こされるのか?②

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第5弾は「むすび誌2019年3月号」~「むすび誌2019年8月号」までの連載より「腸荒れはなぜ引き起こされるのか?(岡部賢二∥作)」の記事です(全6回)。
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画期的だった抗生物質 一方で腸内環境の悪化
 腸荒れが引き起こされる原因の一つに「抗生剤」があります。
 「抗生物質」はウイルスや細菌を殺したり増殖を防ぐ薬剤です。同様の働きをなず薬剤で「抗菌剤」と呼ばれるものもありますが、天然由来の物質から成分を取り出したものが抗生物質、化学的に合成したものが抗菌剤で、両方合わせて抗生剤と呼びます。
 青カビの作るペニシリンという抗生物質のおかげで肺炎や化膿菌による病気が減り、現代医療は飛躍的に発展したと言われていますが、一方で弊害も出ています。
抗生物質の間違った使い方や過度の使用による副作用です。
 抗生物質を安易に摂取することで、お花畑であった腸内細菌叢のバランスが崩れ、有用細菌が死滅して焼野原状態となります。
その結果、ぺんぺん草しか生えない劣悪な環境になり、さまざまな不調を作りだすのです。
 代表的な症状が皮膚の発疹、下痢、口内炎、肝障害、白血球や血小板の減少、アナフィラキシーショックなどです。

医薬品より畜産で大量投与されている
 腸は体内で最大の免疫機関といわれていて、抗生剤による腸内環境の悪化は免疫力の低下や異常につながります。リーキーガット症候群のような腸荒れの原因も、近年増加している自己免疫疾患の増加も、抗生剤がかかわっているとみて間違いないでしょう。
 したがって、最近では副作用緩和のために、抗生物質耐性の乳酸菌または酪酸菌などの製剤が投与されています。
 実は、抗生物質は医薬品として使用されるよりも、畜産に用いられる方がはるかに多く、全体の3分の2を占めています。
 なぜなら家畜は、日当たりが悪く、密飼いされるなど劣悪な環境で飼育されることが多いので、感染症予防のために大量の抗生剤が投与されるからです。
 一時、鳥インフルエンザや豚インフルエンザ、狂牛病が大問題となりましたが、そうした感染症から動物たちを守るために抗生剤が必要なのです。

できるだけ避けたい薬剤
 ところが、餌に混ぜられた大量の抗生剤によって、家畜の体内で薬剤耐性菌が繁殖し、それによる食肉の汚染が問題となっています。
 日本では、この薬剤耐性菌により、毎年8000人くらいが死亡していると言われ、実際に国産鶏肉の69%から抗生物質が全く効かない耐性菌が検出されています。
鶏肉だけでなく、牛肉や豚肉、養殖の魚も注意が必要です。
 がんの方の腸にはカンジダ菌がはびこっている場合が多く、共通して腸内環境の悪化がみられます。もしかしたら、がん患者激増の背景には、こうした薬剤による影響があるのではないでしょうか。
 まずは、食物を購入する際に、防腐剤や保存料を含む食べ物、薬剤が大量に使用されている安い肉や蓄肉加工品を避けることです。そして、食品の裏書き表示を見ながら伝統製法の調味料や食材を選ぶように心がけてください。

梅干しや梅酢は天然の抗生物質
 天然の副作用のない抗生物質的な働きをする食べ物としては、梅干しや梅酢があります。
 これらに含まれる塩分や有機酸には防腐、殺菌、保存、抗生作用があり、塩分に含まれるマグネシウムなどのミネラルは、発酵促進作用や保温作用、神経伝達作用といった有用な働きも併せ持っています。
 そのため、伝統製法で作られた梅製品は、悪玉細菌を瞬時に死滅させますが、善玉細菌は活性化するという優れものです。
 そして、この梅干しや梅酢と同じような抗菌作用を持っているのが麹です。
 麹菌はカビの一種で、発酵によってさまざまなビタミンやアミノ酸、酵素を生み出すことが分かっています。そして、嫌気性菌と好気性菌が共生する特殊な発酵過程(複合発酵)を経ることにより、乳酸菌や酪酸菌といったさまざまな菌を作り出します。

発酵食品で腸を守る
 腸内には、酸素の好きな好気性菌と水素が好きな嫌気性菌が共存していて、嫌気性菌は人体に必要な栄養素を作り出すのに対し、好気性菌は天然の抗生物質を生み出し、腸内を健康に保ってくれます。
 これら二つの菌が共生するためには、腸内に十分な酸素と水素(マイナス水素電子)がたっぷりと供給されることが必要です。
麹菌は、複合発酵によって、両方の菌に必要な成分の供給をし、腸内環境を最善な状態にしてくれます。
 麹を用いて作られた伝統製法の味噌や醤油、酢、みりん、塩麹、もろみといった発酵食品を料理に用いることで、抗生剤の害から腸を守りましょう。
 ごはんにみそ汁、梅干しと漬物中心の和食を心がけていれば、腸内環境を健やかに保つことができます。まずは、日々の食事の見直し、医薬品に頼る生活の改善をしていきましょう。



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岡部賢二(おかべ・けんじ)
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。著書は「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをきれいにするマクロビオティック」(PHP研究所)、「家庭を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)

【免疫力UP情報】腸荒れはなぜ引き起こされるのか?①

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第5弾は「むすび誌2019年3月号」~「むすび誌2019年8月号」までの連載より「腸荒れはなぜ引き起こされるのか?(岡部賢二∥作)」の記事です(全6回)。
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腸内細菌の95%は大腸にすんでいる

 最近、腸内環境を改善するためのさまざまな本や健康食品が販売されていますが、これは、多くの方に腸が大切な臓器であることが認知されたからでしょう。
腸の働きがわかると、食事による改善ができるようになります。まずは、腸のメカニズムを見ていきましょう。
 腸は小腸と大腸に分かれています。小腸は長さが6~7メートルもあり、腸壁が絨(じゅう)毛に覆われているのに対して、大腸は1.5メートルくらいで、絨毛がないのが特徴です。
 腸内細菌は約300種類、100兆個くらい存在し、重さにすると1.5キロにもなるといわれ、小腸に5%、大腸に95%存在します。したがって、腸内環境の改善には、大腸の働きをいかに良くするか、ということが決め手になります。

消化と吸収は小腸が主
 小腸では食物の消化と吸収が行われ、吸収できなかった残りの水分や栄養素は大腸で吸収されます。
 人間の活動エネルギーとして欠くことができないブドウ糖(糖質)は、主に小腸で吸収されますが、精白した糖質である白米や精白小麦粉、白砂糖は、ブドウ糖が急激に吸収され、血液中に取り込まれるため、高血糖状態を招き、糖尿病になりやすくなります。
 また、食物中のたんぱく質はアミノ酸まで分解されて小腸で吸収された後、門脈を通じて肝臓に運ばれて、酵素やホルモンといった人体に必要な物質に合成され、過剰なブドウ糖やアミノ酸は尿として捨てられます。

ブドウ糖不足になると大腸の炎症から肌荒れに
 甘酒を作るときに麹(こうじ)菌のエサとしてごはんの糖質を用いたり、酵素飲料を製造するときに、酵母菌などのエサとして砂糖が用いられるように、菌にはエサが必要です。
腸内細菌が一番喜ぶエサはブドウ糖です。
 ところが、栄養学者がすすめる消化によい食べ物では、ブドウ糖のほとんどが小腸で吸収されてしまい、大腸まで届きません。そうなると、腸内細菌は生き残るために少量のブドウ糖が含まれる粘液を食べはじめます。
 粘液は腸壁を覆っている大切な保護成分で、異物が体内に侵入しないためのバリアを形成しています。
また、水分を吸収した後の食べ物のカスやバクテリアの死骸(がい)といった不要なものを粘膜でコーティングして、排泄(せつ)する役目も担っています。
 したがって、大腸に腸内細菌が必要とする糖質が来ないと、粘膜がただれてしまい、炎症を引き起こしてしまいます。
 大腸の壁面がただれてくると、まずは肌荒れが引き起こされます。
なぜなら肌が外側の皮膚とするならば、人体の内側の皮膚は腸壁であり、両者は裏表の関係にあるといえるからです。
 さらに、粘液の不足は多くの女性の悩みである便秘をもたらします。
 これらのことからも肌荒れや便秘の原因は、腸内細菌のエサ不足にあることがわかります。

腸荒れは病気の原因にも
 そして、腸荒れがひどくなると、腸粘膜に穴が開き、本来通さないたんぱく質やバクテリア、ウイルス、毒性物質などが腸壁の傷から体内に入り込み、リーキーガットという症状を引き起こします。
 他にアトピー性皮膚炎や花粉症といったアレルギー疾患、潰瘍(かいよう)性大腸炎、クローン病などの自己免疫疾患も、腸荒れが原因となって生じる症状といえます。
 「情報をリークする」という言葉がありますが、リークとは漏れることを指します。
テニスラケットのボールを跳ね返す部分をガットといいますが、腸をこのガットに例えると、ガットの目が大きくなると大きなボール状のたんぱく質の塊が漏れ出すわけです。

菌が好む食物繊維で腸内環境を改善
 腸の炎症を改善するためには、大腸にいる腸内細菌にエサを与えてあげることです。それには、小腸で吸収されないブドウ糖を提供してあげる必要があり、それが食物繊維なのです。
 食物繊維には不溶性と水溶性があり、不溶性食物繊維であるセルロースはブドウ糖が長い鎖状にくっついたもので、小腸を素通りして大腸に届き、腸内細菌のエサになります。
皮付きの玄米や雑穀が体によいといわれるのは、小腸でゆっくりと吸収されるため、血糖値が急激に上がらず、糖尿病になりにくい体質を作るだけでなく、大腸の腸内環境をよくしてくれるからです。
 一方、海藻類やきのこ類、こんにゃく、ごぼうといったカロリーが低いものや、海藻やきのこ、里芋などのヌメヌメ成分に含まれる水溶性食物繊維は腸内細菌の好むエサになります。
 また、オリゴ糖や葛(くず)に含まれる糖質も難消化性なので、そのほとんどが大腸に届き、腸内環境を改善してくれる優れものです。
 これからは腸の改善にあえて消化に悪いものを食べるという新しい常識が必要ですね。



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岡部賢二(おかべ・けんじ)
大学在学中に渡米し、肥満の多さに驚いて「アメリカ社会とダイエット食品」をテーマに研究。日本の伝統食が最高のダイエット食品と気づいた後、正食と出会う。正食協会講師として活躍後、2003年、福岡県の田舎に移り住み、日本玄米正食研究所を開設。2005年にムスビの会を発足させ、講演や健康指導、プチ断食セミナーやマクロビオティックセミナーを九州各地で開催している。正食協会理事。著書は「マワリテメクル小宇宙~暮らしに活かす陰陽五行」(ムスビの会)、「月のリズムでダイエット」(サンマーク出版)、「心とからだをきれいにするマクロビオティック」(PHP研究所)、「家庭を内部被ばくから守る食事法」(廣済堂出版)、「からだのニオイは食事で消す」(河出書房)、「ぐずる子、さわぐ子は食事で変わる!」(廣済堂出版)

【健康情報】2019年4月号 タネと私たちの暮らし④

多様性を維持して健康に

・農業研究者 吉田太郎さん

 講演会で長野県の種子条例などについて報告した農薬研究者の吉田太郎さん(長野市在住)。昨年末に、印鑰さんの話や国内外のさまざまな動きを折り込みながら、環境・農業・食・健康を関連づけてひとつながりの視点からとらえた画期的な新著『タネと内臓』が出版され、注目されています。

アグロエコロジーに活路
 吉田さんは、旧ソ連による経済封鎖を機に有機大国となったキューバをルポした『200万都市が有機野菜で自給できるわけ』を2002年に著し、大きな話題になりました。
 新著では、FAO(国連食糧農業機関)も唱えるアグロエコロジーという農業のあり方を提起しています。
 アグロエコロジーというのはあまり聞き慣れませんが、同書によると、農場での水や養分の循環を促進して化学肥料を減らし、生物多様性を維持することで害虫を自然に防除して、農薬も減らします。
 「ポイントは農業生態系内における生物の相互作用を生かすこと」(同書)です。
 認証基準のある有機農業とは違い、各地の生産者が自然条件に合わせ、有機農業を含むやり方を模索して、それぞれの地域で独自に取り組みます。
 環境に負荷をかけ続ける工業化された農業ではなく、生態系の維持を目ざすアグロエコロジーを担うのは、地域に密着した小規模家族農業でもあるのです。
 そして、微生物が育む豊かな土壌で、多様性のあるタネから実った栄養に富んだ作物は、私たちの腸内細菌も豊かにして、健康をもたらしてくれるのです。

1型糖尿病で緊急入院
 実は吉田さんには苦い体験があります。
 三年余り前に突然、1型糖尿病と診断されて緊急入院。以来約一年間、一日に四回インスリンを注射する生活を余儀なくされました。
 大半が幼少期に発症する1型糖尿病に中年になってかかるのは、わずか100万人に1人。暴飲暴食した覚えのない吉田さんは、「なんで五〇代でいきなり?」と不思議がりました。
 原因についてある会合で吉田さんは「たぶんリーキーガット症候群。グリホサートと遺伝子組み換え食品にやられたと思いました」と打ち明けました。
 グリホサート(ラウンドアップ)は、多国籍バイオ企業のモンサント(バイエルが昨年6月に買収)が開発し、遺伝子組み換え種子とセットで使われる除草剤です。
 グリホサートは、植物がアミノ酸を合成する「シキミ酸経路」を壊して生長を止めることで、枯れさせます。
 遺伝子組み換え作物はグリホサートに対して耐性があるので影響を受けない、人間を含む動物はシキミ酸経路がないので安全だというのが、モンサントの説明ですが、シキミ酸経路をもつ土壌微生物を殺してしまえば、遺伝子組み換え作物を含む植物は、マンガンなどの土中のミネラルを吸収できなくなります。
 「遺伝子組み換え作物はミネラルに乏しい」というデータがあるのは、そうした理由が考えられます。そして、ミネラルの不足や欠乏は、神経の機能や代謝などに影響し、糖尿病の原因にもなります。
 自給率の低い日本は、遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシを大量に輸入し、世界有数の遺伝子組み換え消費国なのです。

有機生活に努めて改善
 昨年8月、米国サンフランシスコの裁判所が、「除草作業で使用したグリホサートが原因で悪性リンパ腫を発症した」という学校の用務員だった男性の訴えを認めて、モンサントに約三二〇億円の支払いを命じました。
 その判決を受けてイギリスでは、流通大手がグリホサートの販売を見合わせる方針の検討を始めたといいます。
 ところが、日本ではホームセンターやネット通販などで手軽に買うことができ、2017年末にはひまわり油で残留基準値が400倍などと大幅に規制緩和されました。
 一方、吉田さんは、外食や加工食品をできるだけ控え、薬をやめて有機作物だけの食生活にしてみると、便が変わり、インスリン注射によって増えていた体重が二週間で一気に一〇キロも落ちて、血糖値が正常に戻りました。
 「アグロエコロジーや伝統農業というと、大昔に戻ると感じられるかもしれませんが、そうではありません。むしろ地域の中にある豊かな食文化や、タネの保存方法とか微生物の共生といったことこそ、どんどん掘り下げないといけないフロンティアなのです」


『タネと内臓』吉田太郎∥著

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吉田太郎(よしだ・たろう)
1961年東京生まれ。筑波大学自然学類卒。同大学院地球科学研究科中退。キューバの有機農業、医療の他、アグロエコロジーや伝統農業の著作を執筆してきた。大病を契機に鎌倉で座禅会や松本での座禅断食会にも参加し、タネと内臓のつながりを自らも探求している。最新の著書に『タネと内臓』(2018、築地書館)がある。長野県在住。

【健康情報】2019年4月号 タネと私たちの暮らし③

伝統の味が世界の宝に

・ノンフィクション作家 島村奈津さん

 イタリア発のスローフード運動をいち早く日本に紹介して、スローフードブームを巻き起こしたノンフィクション作家の島村奈津さんは、イタリアをはじめとする諸外国のみならず、国内を含む各地で守られてきた在来品種や伝統的な食文化にいま、大きな関心が寄せられていることを紹介しました。

アマルフィのレモン栽培
 地中海に面したイタリア南部のアマルフィ海岸。沿岸の急斜面に張りつくように築かれた都市の美しい景観は、ユネスコの世界遺産にもなっていますが、観光客でにぎわう街の上に、小さな段々畑が折り重なるようにつくられています。
 島村さんによると、崩れやすい石灰岩でできた岸壁に、19世紀頃に土が運ばれてレモン栽培が始まりました。
 ところが、とても安価なアフリカ産やスペイン産のレモンが市場に出回るようになると、アマルフィのレモン農家は苦境に立たされました。
 しかし、レモンづくりがすたれて段々畑が荒廃してしまうと、土壌が流出してがけ崩れが起きる危険性があります。もしそうなると、観光資源である貴重な景観が損なわれ、地域経済にとっては大打撃です。
 そのことに気づいた地元の人たちは、在来種のレモンと段々畑、そして美しい景観を守ろうと、畑の管理に努める一方、レモンジュースをつくるなど六次産業化にも取り組みました。
 「食べものが、地域の景観と観光にどれだけ密接にかかわっているか、一目でわかります」と、島村さんはアマルフィの風景写真を示しながら解説しました。

ひと手間かけたトマト人気
 イタリア人の食卓に欠かせないニンニク。中国産の安くて大きなニンニクが市場を席巻し、イタリアのニンニク生産者たちは、国内産の価値を消費者にどう伝えるか、とても苦労しているそうです。
 「玉ネギも中国からたくさん来ていて、イタリアの昔ながらの赤玉ネギは値段が倍くらいもします。トスカーナにある古い町で13世紀ぐらいからある赤玉ネギは、ほとんど消えかけていましたが、地元の人たちが復活させました」
 ナポリに近いベスビオ火山のふもとの乾燥地にできるトマトは、ミネラルが豊富です。糖度が低いので、収穫した実をたくさん結わえて一〜二か月干すと、熟して上品な甘さになります。
 ひと手間をかけて付加価値を高めたトマトは人気を呼び、生産者も二倍に増えて、地元の若者たちが開発した缶詰は一大ブランドに育ちました。


イタリアにも魚醤文化
 イタリアにも、「コラトゥーラ」と呼ばれる魚醤(ルビ=しょう)の文化があります。
 アマルフィ海岸の漁師町で八〇〇年も続くイワシの魚醤で、不振のマグロ漁に代わって町おこしとして盛んになり、いまでは三越百貨店の棚に並ぶほどになっています。
 秋田・男鹿半島でハタハタを使った「しょっつる」をつくっている人たちは、遠いイタリアのコラトゥーラを知って「同じだ」と驚き、とても励まされたそうです。
 また、シチリア島にあるピザ屋は、粉だけも十種類ある中から選んで楽しめます。「その中に在来種三種のブレンドがあります。古代小麦、スペルト小麦と呼ばれているものは、倍くらいの値段で売れています」
 中部のアブルッツォ州の1200〜1600メートルの山間地では、何種類かの小麦とレンズ豆が栽培され、レンズ豆料理を食べに世界中から観光客が押し寄せています。
 日本の例として島村さんは、五十種類もの在来の野菜を食べることができる三重県のレストランを紹介しました。
 もともと看護師だった若い夫婦が、医療現場ではなかなかできない「癒やし」を模索する中で、新婚旅行先でアメリカの先住民たちに出会い、食に行き着きました。

意識の変化が社会改革に
 スローフード運動は、1986年にローマにマクドナルドが進出したのを機に、世界を覆う味の均質化にあらがい、「味と食文化の多様性を守ろう」と始まりました。
 スローフード協会は発足当時、①質の良いものをつくってくれる小さな生産者を守る、②子どもたちを含めた消費者の味の教育、③在来種や伝統漁法など希少な農水産物や伝統の味を守る—という三本柱を掲げました。
 「地域の農産物や加工品を守ることは、オーガニックを含め、環境にいい、人間にもいいだけではなくて、これから間違いなく地域の経済を支えていく一つのカギになります。世界が均質化していく中で、この地域で、この時期にしか食べられない食品は、価値をもたないはずがありません。まさに世界の宝です」
 スローフード運動にはその後、「食の南北問題」という視点が加わります。
 「消費することに専念して大量に食料廃棄をしてしまう先進国と、生産地・原産地に成り下がって買いたたかれる南半球を中心とした地域の格差の是正が大事だ、ということです」
 遺伝子組み換え種子と農薬をセットにしたビジネスモデルに対抗して、地域の農家が自由にタネにアクセスできる権利も重視されるようになりました。
 「ふだん食べている私たちが、ちょっと意識を変えることで大きな社会変革ができます。次の子どもたち、孫の世代に、原発のごみしか残さなかったねと言われないよう、みなさん一人ひとりが主役です」
 島村さんのことばに、多くの人がうなずきました。

【健康情報】2019年4月号 タネと私たちの暮らし④へ
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島村菜津(しまむら・なつ)
1963(昭和38)年、福岡県出身。東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。イタリア美術史を専攻し、卒業後イタリアへ留学。著書には十数年にわたって取材したイタリアの食に関する『スローフードな人生!』、『エクソシストとの対話』(21世紀国際ノンフィクション大賞優秀賞)など。ニッポン東京スローフード協会会員。

【健康情報】2019年4月号 タネと私たちの暮らし②

タネの多様性が食料安保に
 タネの多様性を失うことは、ときに私たちの生存にかかわる深刻な問題を引き起こします。
 アイルランドでは19世紀半ば、国民の食生活で依存度の高かったジャガイモが、菌病によりほぼ全滅し、当時800万人だった人口の2割が餓死、2割以上が外国に逃れて、半減したといわれます。
 新大陸アメリカからもたらされた数少ない品種のジャガイモが大規模に栽培され、大量に消費されるようになったため、瞬く間に病気が蔓(ルビ=まん)延してしまうと、なすすべがなかったのです。
 逆に、1970年代にインドとインドネシアの水田がウイルスに襲われたときは、6000種もある稲の品種からウイルスに強い品種を見つけることができ、アイルランドの悲劇を繰り返さないですみました。
 昨年の猛暑や豪雨災害、今冬の暖冬など、最近の国内外の気候変動を実感している人は多いと思いますが、さまざまな条件に合ったたくさんの品種を確保することは、いざというときにもとても重要です。
 また、気候変動も、農業を変えることで抑えられるといいます。
 食肉にされる牛たちが吐き出すゲップは大量の温暖化効果ガスとなり、アメリカでトウモロコシの缶詰をつくのに10倍以上のエネルギーが投入されています。
 「多様性を守ることは私たちの命の保証になります」と印鑰さん。


リーキーガットの模式図=印鑰氏提供

似ている土壌と腸内の細菌
 化学肥料や農薬、遺伝子組み換え種子の利用により、土壌や作物が大きなダメージを受けるという話がありましたが、実は私たちのからだにも影響することが心配されます。
 印鑰さんは「世界から土壌が失われていることは、私たちの腸でも同じことが起きています」として、アメリカでも注目されているというリーキーガット症候群を取り上げました。
 岡部賢二さんが本誌連載2月号でも紹介したリーキーガット症候群は、腸壁の一部が傷ついて穴が開き、未消化のものが血液中に漏れ出すことで引き起こされる症状です。
 アレルギー疾患や自己免疫疾患など、さまざまな病気の原因になるのではといわれ、印鑰さんは農薬や遺伝子組み換え食品の影響に言及しました。
 アメリカでは慢性疾患や糖尿病が増え、とくに若い人たちの平均寿命が2014〜16年の3年連続で短くなっているそうです。
 「土壌細菌は植物に栄養を与えて植物を育て、腸内細菌は私たちに必要な栄養を与えてくれます。土壌細菌と腸内細菌は、機能がとても似ています。そして、土壌細菌が失われていくと同時に、私たちの腸内細菌も傷み続けていきます」

国連は小規模家族農業推進
 それでは、世界はこのまま遺伝子組み換え企業による工業化した農業に席巻されてしまうのでしょうか。
 印鑰さんは「いま世界が変わり始めています」と力強く説きました。
 その一つの現れが、国連の大きな方針転換です。
 かつて民間企業による大規模農業を提唱してきたFAO(国連食糧農業機関)は、2008年の世界食料危機を教訓として、小規模家族農業の推進にかじを切りました。
 2014年には国際家族農業年が宣言され、今年から2028年までを「家族農業の10年」と定められました。
 そのときの国連の決議では、小規模家族農業を推進することで、食料安全保障や栄養の向上、伝統的な習慣や文化の保全、生物多様性の維持、農民の生活改善による貧困の撲滅、8億人を超える人たちが苦しむ飢餓や深刻な栄養不良の改善、温室効果ガスの排出低減—などにつなげることをうたっています。
 また、昨年末には、国連で世界人権宣言の流れを汲む「小農と農村で働く人びとの権利宣言」が採択され、その中で自家採種の種苗の保存・利用・交換・販売の権利などを含む「種子の権利」が明記されました。
 まさに農業を変革することで、人類の抱えるさまざまな問題の解決策を見いだすことができると、印鑰さんは話します。

多様性支える農家を守ろう
 そうした世界的な潮流や、欧米を中心にブラジルやインド、中国などでも有機市場が拡大する一方で、種子法を廃止した日本では、家庭菜園では何の制約もないものの、農家では農水省の省令で自家採種が禁止される登録品種が増えてきています。
 また、ニュージーランドやEUで遺伝子組み換え作物と同様の規制の動きがあるゲノム編集食品について、安全性審査の義務づけを見送ったことなどにも、注意を促しました。
 印鑰さんは「数でいえば農家のもつ在来品種は少ないですが、多様性を支えているのは農家のおかげ。農家を守ることこそが、私たちがしなければいけないこと」として、種子法に代わる公的な支援が必要と訴えました。
 具体的には、タネ採りの上手な農家と契約して、その農家が安心してタネ採りに打ち込めるよう、自治体などが経済的に支える「参加型育種」により、地域のタネが復活できるのではと提案しました。

ゲノム編集食品
 ゲノム(遺伝情報の総体)のうち、特定の遺伝子を改変する遺伝子操作をして生産される食品。新たな遺伝子を導入するのではなく、もともとある遺伝子の機能がはたらかないようにしたものが主。血圧を下げる作用がある成分を増やしたトマト、アレルギー物質の少ない卵などが開発されている。
 日本政府は、遺伝子組み換えではないとして、規制せず届け出だけで販売や耕作を解禁する方針だが、がんや自己免疫疾患を引き起こす可能性などが指摘されている。

【健康情報】2019年4月号 タネと私たちの暮らし③へ
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印鑰智哉(いんやく・ともや)
アジア太平洋資料センター(PARC)、ブラジル社会経済分析研究所(IBASE)、Greenpeace、オルター・トレード・ジャパン政策室室長を経て、現在はフリーの立場で世界の食と農の問題を追う。ドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット』(2015年)、『種子ーみんなのもの? それとも企業の所有物?』(2018年)日本語版企画・監訳。『抵抗と創造のアマゾン-持続的な開発と民衆の運動』(現代企画室刊)。共著「アグロエコロジーがアマゾンを救う」。

 

【健康情報】2019年4月号 タネと私たちの暮らし①

・種子を守るアドバイザー 印鑰(いんやく)智哉さん

種子法廃止の背景は

種子法廃止といわれても、それがどんな意味をもつのか、よくわらからないという人も多いと思います。
そこで最初に、日本の種子(たね)を守る会事務局アドバイザーとして全国を講演で飛び回っている印鑰(いんやく)智哉さんの解説から紹介します。

気候風土に合った食生活を
 主催団体の「子どもの食・農を守る会伊那谷」は、種子法廃止をきっかけとして、日本の農業と食の安全を考えていこうと結成され、これまで二回、講演会を開催してきました。
 飯田文化会館の大ホールで開かれた講演会の冒頭、代表の関島百合さんは「種子法は、『おいしいもの、安全なものを食べたい』という願いを長い間、陰でずっと支えてきました。
種子法廃止は、日本という国が国民の食といのち、それにつながる農業を守ることを放棄した結果ではないでしょうか」とあいさつ。

 関島さんは、長野県での種子条例制定の動きを歓迎するとともに、「グローバル企業に支配される、いのちを結ばない食ではなく、日本各地の気候風土に合った食生活と農業がこれからも続くよう願います」と呼びかけました。
 続いて、共催したJAみなみ信州の代表理事が、アメリカ抜きの11カ国で昨年末に発効したTPP(環太平洋経済連携協定)や2月発効の日本とEUとのEPA(経済連携協定)、日米FTA(自由貿易協定)交渉など、農業を取り巻く情勢がますます厳しくなる中で危機感を訴えました。
 一方で、「いま国際社会は持続可能な社会の実現を目ざしています。そのためには、伊那谷の恵まれた自然環境を子や孫の代にしっかりつないでいくことが重要。
今後も安全な食の生産に努力したい」と、市民の理解と協力を求めました。

微生物が栄養や土をつくる
 印鑰さんはまず、微生物と植物の関係から話し始めました。
 野菜など植物のもつミネラルといったさまざまな栄養は、もともとは岩石に含まれていたものです。
しかし、植物自体はそうしたミネラルを直接、吸収することはできず、土壌微生物を介して得ています。
 一方、植物は光合成によって二酸化炭素から生成した炭水化物の4割近くを根から土の中に放出します。その放出された炭水化物が、微生物たちのえさになるのです。つまり植物と微生物は共生関係にあります。
 その共生関係の場となっているのが、根っこの周りにある白いひげ根のようなもの。実はこれは菌根菌と呼ばれる微生物が集まってできた菌根菌糸です。
 菌根菌糸からはネバネバとしたタンパク質が分泌され、そのおかげで土が団粒状になって、水や栄養をたくわえられるようになります。
 ところが、化学肥料を投入して栄養が与えられると、植物は土中に炭水化物を放出しなくなり、共生関係が衰えてしまいます。
 すると土は硬く乾いた状態になり、風で簡単に運ばれたり、大雨になると流出したりします。さらに殺菌剤などの農薬によって、病原菌を防いでいた微生物のバリアもなくなります。


※土の中にある白いひげ根のような菌根菌糸が、植物に栄養を与え、豊かな土壌をつくる=印鑰氏提供

組み換え作物の生産性疑問
 1960年代からの「緑の革命」以降、世界的に農薬や化学肥料の多投が続きました。
ほか森林破壊や過放牧・過耕作などもあり、食べものや水、石油や石炭などのエネルギーといったさまざまな恩恵をもたらしてきた豊かな土壌が、急速に失われています。
 そこで国連は2015年を国際土壌年とし、地球上の生命を維持する要である土壌を守っていこうと国際社会に呼びかけました。
 印鑰さんによると、植物と微生物の共生関係によってできる豊かな土は、厚さ1センチになるには少なくとも100年はかかるということですが、現状では「最悪、あと60年で地球上から土がなくなってしまう」という危機的な状態です。
 さらに、農薬とセットになった遺伝子組み換え作物の拡大が、問題を大きくしています。
 「遺伝子組み換え種子は、生産性が高くなると宣伝されますが、グローバル企業は地域に合ったタネをつくってくれません。例えばアメリカでつくったタネを、南米やインド、アフリカでも栽培するので、生産性が上がるとは限らないのです」
 実際、印鑰さんがかかわってきた、遺伝子組み換え大豆の一大生産国であるブラジルで、大豆の生産性を比較したところ、遺伝子組み換え大豆よりも非遺伝子組み換え大豆の方が生産性が高かったのです。
 しかも、遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシは、タンパク質や微量ミネラルが極端に減り続けているというデータもあります。

競争力強化や民活導入で
 生産性や栄養面からも疑問のある遺伝子組み換え種子ですが、印鑰さんによると、2011年時点で、世界の種子市場の7割近く、農薬市場の8割近くを、多国籍企業である遺伝子組み換え企業4社で独占しているそうです。
 「農業をするためには、遺伝子組み換え企業からタネを買わないといけなくなっている国もあります」
 世界的に遺伝子組み換え種子が拡大する中で、日本では米・麦・大豆については、種子法で守られてきたため、国内で生産されるそれらのタネは基本的に問題はありませんでした。
 ところが、国の規制緩和の流れを受け、「国際競争力の強化」「民間活力の導入」といった理由から、一昨年4月の国会で種子法廃止法案が可決成立し、昨年4月1日で廃止されました。
 民間企業が参入した場合、農家が自家採種できるタネではなく、F1(ハイブリッド)種や遺伝子組み換えのタネに置き換えられることが予想されます。
 そうなると、価格の高い民間のタネでは農作物の販売価格が高騰する、作物の品種が少なくなり気候変動や病害虫などによる被害をより受けやすくなる、企業が指定する化学肥料や農薬を使った栽培方法でしか農業ができなくなる—といった問題が起きることも考えられます。
 種子法で守られていなかった日本の野菜のタネは、以前はすべて国内産でしたが、現在は9割が海外で生産され、ほとんどがF1種です。
 「日本のタネの企業は、まだ遺伝子組み換え企業に買収されていません。遺伝子組み換えのタネは一つもありませんが、生産委託先は遺伝子組み換え企業ということが多くあり得ます」

種子法とは
 正式名は「主要農作物種子法」。対象となる主要農作物は、稲、麦(大麦、はだか麦、小麦)、大豆。サンフランシスコ講和条約発効後、主権を取り戻した日本で、それら主要農作物の種子の品質を管理し、優良な種子を安定的に供給することを都道府県に義務づけた。しかし、「技術向上により、種子の品質は安定している」「多様なニーズに対応するため、民間の力を借りる必要がある」などの理由で廃止された。種子法廃止により、都道府県の試験場で品種改良を進める予算や態勢の縮小、外資の参入などが懸念されている。
※参考資料 「種子法廃止でどうなる?」(農文協編)

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印鑰智哉(いんやく・ともや)
アジア太平洋資料センター(PARC)、ブラジル社会経済分析研究所(IBASE)、Greenpeace、オルター・トレード・ジャパン政策室室長を経て、現在はフリーの立場で世界の食と農の問題を追う。ドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット』(2015年)、『種子ーみんなのもの? それとも企業の所有物?』(2018年)日本語版企画・監訳。『抵抗と創造のアマゾン-持続的な開発と民衆の運動』(現代企画室刊)。共著「アグロエコロジーがアマゾンを救う」。