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【免疫力UP情報】子どもの食の悩みを食行動学で解くと・・・②

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第8弾は「むすび誌2017年6月号」特集 ”食行動は変えられるか” より 子どもの食の悩みについて山中祥子先生のインタビューです(全2回)。
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母親が嫌いなものは子どもも嫌いになりやすい

「好き嫌い」に関連して、子どもは周りの大人たちの反応をよく観察し、大人の反応に合致した食べ方をする、という話もうかがいました。
 米国の研究ですが、ある赤ちゃんにトマトジュースとオレンジジュースを交互に与えたところ、オレンジジュースをよく飲んだ日があったかと思うと、別の日はトマトジュースをよく飲むなど、嗜好にばらつきがみられました。
 調べると、ジュースを飲ませているベビーシッターの学生が、どちらのジュースが好きかによって、赤ちゃんのジュースの好みが変化していたことがわかりました。
 例えば、トマトジュース好きの学生がオレンジジュースを与えた場合、トマトジュースのときとは違った、学生のちょっとしたしぐさや表情の変化を赤ちゃんは敏感に感じ取り、それが食行動に影響して、オレンジジュースを積極的に飲もうとしなかったと考えられるのです。
 山中さんが「しゃべる、しゃべらないという以前に、ノンバーバル(非言語)なコミュニケーションがあり、自分の思っていることや考えていることが態度に出てしまうので、気をつけなさい」と学生に話すというのも、もっともなことです。
 「お母さんの好き嫌いが子どもにも伝染するとよく言われるのは、まずお母さんが、自分が嫌いなものは食卓に出さない、ということがあります。また、頑張って出したとしても、お母さんだけ食べなかったりとか、食べても少しだったりすると、子どもは『なんでお母さんは食べないのか』と警戒し、先ほどの赤ちゃんのように、あまり積極的に食べなくなってしまうこともあります」
 好き嫌いにはさまざまな要因が絡んでいますが、山中さんは「やっぱり経験が大きい」と話します。



食卓が〝楽しい〟ことが〝おいしい〟につながる

 
一人で食べることは「個食」や「孤食」などと否定的にとらえられがちですが、山中さんは「実は一人でじーっと食べることに集中して食べた方が、食物そのもののおいしさについては、より強く感じることができるのではないか」と考えています。
 さびしさを感じさせる「孤食」は、「一人で食べるより、だれかといっしょに食べる方がおいしい」という考え方に通じます。でも本当に「だれかと食べる方がおいしい」のでしょうか。
 山中さんら3人の食行動学研究者は、共同で実験をして論文をまとめました。その結果わかったのは、「だれかと食べると常においしいというわけではない」ということでした。
 例えば、居酒屋で気のおけない友人らと飲食をともにして、さほど「まずい」と感じないのは、食べものの味自体を「おいしい」と判断したというよりも、その場の楽しさを投影したためだというのです。
 ということは、「おいしい」と感じるためには、どんな状況で食べるかということが重要になります。だから「家庭での食卓が楽しいというのはすごく大事なこと」なのです。
 「それこそ有機野菜を使い、手づくりでだしをとってと、どんなに栄養が整った食事をお母さんが頑張ってやっていても、食卓の場面が常に楽しくなかったら、その子はおいしく食べることができません」
 食事中に、テストの結果をとやかく言われたり、怒られたりすると、子どもはてきめんに嫌な気分になるでしょう。その「嫌な気分」がそのとき食べていた食べものの「好き嫌い」の原因になることもあるので、注意したいものです。

健康を志向しすぎると不健康な結果を招くことがある

 同じ食べものでも、その場の雰囲気で「おいしさ」が変化するという話があったように、「おいしい」というのは「ものすごくあいまいな概念」だと山中さんは言います。
 「とくに人間は認知で食べている部分が大きいので、有機野菜といわれれば『おいしい』と感じる人もいます。実際においしい場合もあると思いますが、目隠しして食べた場合に、有機野菜とそうでない野菜の区別がつけられないことは多いのです。そういう意味で『認知で食べること』に重点を置きすぎると、不健康につながる場合もあるのです」
 食行動研究の第一人者といわれる米国人心理学者のポール・ロジンは、次のような設問を考えました。
 「あなたはオレンジの木がある無人島に行こうとしています。ホットドッグ、チョコレート、バナナ、アルファルファ(またはホウレンソウ)の中から1種類だけ持って行けるとしたら、あなたは何を選びますか?」
 もしかしたら、健康志向の強い人はホウレンソウを選ぶかもしれません。しかし、オレンジとあと1種類で生き長らえないといけない、というサバイバル問題であると冷静にとらえれば、カロリーが高く保存性の高いチョコレートを選ぶのがもっとも賢明な選択でしょう。
 健康を志向しすぎると不健康な結果を招くことがあるという、認知のゆがみによって生じるパラドックス(逆説)を示す好例の一つです。

“引き算”の日本食を味わうには一定の訓練が必要
 
 たくさんある食べものの「おいしさ」を感じるためには、それなりの訓練が必要です。
 簡単にいえば、ニンジンを食べなければニンジンのおいしさはわかりません。
 「野菜を食べ慣れていない人は、たぶん野菜の味がわかっていないのだと思います。そうすると、健康にいいとわかっていても食べたくない。だけど野菜のおいしさがわかっている人は食べられる。玄米のおいしさがわかっている人は玄米を食べられます」
 山中さんによると、洋食に比べてとくに日本食の場合は、その訓練がより求められるそうです。
 「日本食が洋食と違うのは、引き算の文化なんです。だしの味がわかるためには、ある程度、味覚が研ぎ澄まされていないといけません。だから、トレーニングせずに感覚が鈍いままだと、おいしさがわからない。だけど洋食は足し算の文化なんです。足し算の場合は、トレーニングがなくてもおいしさがわかる。だから簡単なんです」
 トレーニングというと、例えば、ある程度の空腹状態を保つことができる、味覚を含めた感覚を研ぎ澄ます、などが考えられますが、山中さんの言うように「トレーニングができればおいしくなる。単純にいえばそれだけですが、これだけ簡単に、すぐに魅力的な食べものが手に入る環境では、なかなかそれができない」のが現実です。

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山中祥子(やまなか・さちこ)
池坊短期大学准教授。博士(新医学)。神戸松蔭女子学院大学人間科学部と京都橘大学人間発達学部でそれぞれ非常勤講師も務める。1991年、同志社大学文学部心理学専攻卒業。3年間の民間企業勤務のあと半年間、フランスに留学。97年に神戸松蔭女子学院短大入学。出産、休学を経て、2000年に同短期大生活科学科食物栄養学専攻卒業、栄養士免許取得。2002年に管理栄養士免許取得。05年に神戸松蔭女子学院大学生活学科助手を務めたあと、神戸女学院大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了、同志社大学分化学研究科博士後期課程修了。池坊大学には10年に着任し、製菓衛生師を目指す学生に公衆衛生学、食品衛生学、食品額などを指導している。