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【免疫力UP情報】子どもの食の悩みを食行動学で解くと・・・①

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第8弾は「むすび誌2017年6月号」特集 ”食行動は変えられるか” より 子どもの食の悩みについて山中祥子先生のインタビューです(全2回)。
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離乳食のときはいろんな食べものを 〝根気よく〟与えてみる

 「とくに大事なのは離乳食のとき」と山中さんは話します。
 その頃の赤ちゃんは、手や目にふれたものを、片端から何でもつかんで口に入れようとします。「食べものかどうかを確認する作業の名残」です。
 雑食性の動物は、【食物新奇性恐怖】と【食物新奇性嗜好】という、相矛盾する行動傾向をもっています。
 食物新奇性恐怖というのは、食べたことのない食物の摂取をためらうことです。食物新奇性嗜好はその逆で、食べたことのない食物を積極的に摂取しようとすることを指します。その相矛盾する行動傾向が「雑食性動物のジレンマ」と呼ばれるものです。
 山中さんは、離乳食のときにお母さんがあげなかったものは、食物新奇性恐怖からその後も食べようとしなくなる可能性があるので、「とにかくいろんなものをあげなさい」とアドバイスします。
 コツとしては、1回でダメだったとしてもあきらめず、日をおいて同じものを与えるなど、根気よく繰り返してみることです。赤ちゃんは気まぐれなので、その食べものが好きか嫌いかではなく、単に暑かったり寒かったりという理由だけでもそっぽを向いてしまうことがあるからです。
 お母さんの方も、「せっかくつくったのに」と思わず、「食べなくてもいい」くらいの気持ちで余裕をもっていれば、子どもが食べなくてもイラつくことがなくなります。

下に新聞紙を敷き 〝手づかみ食べ〟を どんどんさせましょう

 口の周りや着ているものだけでなく、周囲を汚してしまう「手づかみ食べ」。中には眉をひそめる大人もいますが、山中さんは「どんどんさせましょう」と説きます。
 手づかみ食べをすることで、赤ちゃんは、手の感覚や口から食べものまでの距離感などを養います。それがひいてはスプーンを握ったり箸を持ったりするときに役立ちます。
 また、食べものの「熱い・冷たい」「軟らかい・硬い」などの違いを、口とともに認識します。
 そうした手づかみ食べの大切さがわかれば、「行儀が悪い」「汚い」と悩むこともなくなります。そうはいっても、床が汚れれば掃除が大変ですから、あらかじめ下に新聞紙を敷いておくなどしておけば、怒らなくてすみます。
 「余裕をもって子育てをするためには、ある程度、先のことを想定しておかないといけません。私はよく学生たちに自分の失敗談を話しますが、これは、私の失敗談を聞くことで『そんなこともあるんだ』とわかってもらうためです。このような疑似体験を通じて、怒らないための工夫ができるようになればいいと思っています」




「おなか空いたー」は苦手なものを克服するチャンス


 「好き嫌いをなくすにはどうしたらいいのか」という問いは、古くて新しい悩みです。
 仕事などであわただしく帰宅した途端、子どもに「おなか空いたー」と泣かれることがよくあります。そんなとき、みなさんはどうしていますか。
 同じような経験がある山中さんは「そこでつい〝赤ちゃんせんべい〟をやってしまうというようなことになるんですよね。でも、それをやってしまうと赤ちゃんはお腹がいっぱいになってしまいます。いっぱいにはならないにしても、次に食べるものは絶対においしくなくなります」と指摘します。
 甘い砂糖水を用意して、数分ごとに少量の砂糖水を口に含んでもらうという、心理学の実験があります。一人は含んだ砂糖水を吐き出してもらい、別の一人はそのまま飲み込んでもらいます。
 そうして1時間以上も続けると、吐き出した人は「甘くておいしい」という最初の感覚が維持されるのに対し、飲み込んだ人はだんだん「おいしい」と感じなくなります。
 たとえ少量であっても、栄養価やエネルギーとしてからだの中に入れば、血糖値が上がります。血糖値が上がれば、人は食欲が収まるよう反応します。
 「いつまでもおいしかったら、食べることがやめられないので、おいしさが低下するようにからだができています。それはものすごくよくできた自然の摂理です」
 実際には満腹になっていなくても、何かエネルギーになるものを少しでも口にすれば、おいしさはどんどん低減されていきます。これは【感性満腹感】という食行動学の理論だそうです。
 その理論を応用して、お腹を空かせて泣いている子どもに対しては、おやつをあげるのではなく、それまで苦手だったものを与えると、「『意外とおいしい』と思うようになるかもしれません」と山中さん。
 「ただし、あまりに空腹すぎて『おえっ』となるときもあるので、その限度は見極めてほしい。ちょっとお腹が減ったときにちょっと苦手なものを先に与える、というのがポイントです」
 西洋のことわざにあるとおり「空腹は最高の調味料」です。

もともと嫌いなピーマンは無理強いせず、ほかの野菜に“置き換える”

 「好き嫌い」に対処するには、別のやり方もあります。
 山中さんがとくに栄養学を学ぶ学生に話すのは、「置き換えてみる」ということです。
 例えば、ピーマンが嫌いな子どもは珍しくありません。それは一つには、ピーマンのもつ苦味に原因があります。生物にとって苦味や酸味は、毒や腐敗などの危険性を予感させるものであるため、子どもがこれらの味を避けようとするのは、実は理にかなった自然な行動なのです。
 そのことがわかれば、子どもがもともと避けようとする苦味をもつピーマンを無理強いしなくても、ピーマンに含まれるビタミンAなど同じ栄養素が入っているほかの野菜に置き換えてみるといいのです。
 「最初からいきなり苦味のあるピーマンを食べさせようと、ハードルを上げる必要はありません。あえてチャレンジャーなことをするよりは、甘味の強いカボチャやニンジンなど、とっつきやすいところからやればいいのです。甘味は苦味とは逆に、生まれつき好まれる味なので、うまくいきやすいのです」
 苦味についても経験を積んでいくうちに、子どもは毒ではないと理解していきます。
 そして、もし少しでもピーマンを食べることができれば、子どもをほめることも効果的です。「『ピーマンを食べられたんだ!スゴイ』と言われたら、子どもは『ボクってちょっとスゴイ』と、気を良くして食べるようになります」
 ピーマンは切り方にもコツがあります。横に切ると苦味やにおいが強くなるので、縦に切って苦味を和らげるのもいいでしょう。

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山中祥子(やまなか・さちこ)
池坊短期大学准教授。博士(新医学)。神戸松蔭女子学院大学人間科学部と京都橘大学人間発達学部でそれぞれ非常勤講師も務める。1991年、同志社大学文学部心理学専攻卒業。3年間の民間企業勤務のあと半年間、フランスに留学。97年に神戸松蔭女子学院短大入学。出産、休学を経て、2000年に同短期大生活科学科食物栄養学専攻卒業、栄養士免許取得。2002年に管理栄養士免許取得。05年に神戸松蔭女子学院大学生活学科助手を務めたあと、神戸女学院大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了、同志社大学分化学研究科博士後期課程修了。池坊大学には10年に着任し、製菓衛生師を目指す学生に公衆衛生学、食品衛生学、食品額などを指導している。