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【免疫力UP情報】なぜ日本人には伝統和食が合うのか⑤

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第2弾は「むすび誌2017年9月号」より「なぜ日本人には伝統和食が合うのか」をテーマにした
奥田昌子さんへのインタビュー記事です。(全5回)

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食改善で「からだは必ずこたえてくれる」

エピジェネティクスから見た健康の極意
 奥田氏のインタビューの終わりの方で、「エピジェネティクス」という言葉が出てきました。最近は書籍のタイトルに使われたり、週刊誌で目にすることもあります。実は、食生活が健康にどのような影響をおよぼすのかを考えるときにも、エピジェネティクスがキーワードになります。エピジェネティクスについて、奥田氏の著書やインタビューなどから、できるだけわかりやすく解説します。

一卵性双生児は病気も同じ?

 これまで注目してきた「体質」。体質というと、生まれつき備わった不変のものと思われがちですが、体質改善という言い方があるように、体質は変えることができます。
 生まれつき備わったものを「遺伝的素因」と呼ぶとします。それに対して、生まれてからあとの生活の仕方や育った土地の風土などが「環境要因」です。
 すると、人間の体質は「遺伝的素因と環境要因との相互作用によって形成される」(『大辞泉』より)と定義できるのです。実際、生活習慣病という言葉が出てきたように、食生活や運動、喫煙、飲酒などの習慣が、さまざまな病気の発症にかかわっています。
 例えば、一卵性双生児を対象に、一方が大腸がん、乳がん、前立腺がんになった場合、もう一方が同じがんになる確率を調査した北欧の研究があります。
 結果は、大腸がんが11%、乳がんが13%、前立腺がんが18%でした。遺伝的素因が100%同じでも、同じがんになる確率は10%台にすぎなかったのです。
 少なくとも3つのがんについては、環境要因が大きく影響しているらしい、ということがわかります。
 また、見た目も、小さいときはうりふたつの顔や印象だとしても、年齢を重ねるにつれて容易に区別できるようになるものです。

遺伝子についているスイッチ

 
一卵性双生児の例からも、遺伝子に書き込まれた遺伝情報が同じであっても、それが実際に作用するかどうかはまた別の話だということがうかがえます。
 その遺伝子の作用をONにしたりOFFにしたりするスイッチの仕組みが「エピジェネティクス」であり、生活習慣を含む環境要因が病気の発症に大きな影響を及ぼすと考えられる根拠となっているのです。

図6を見て下さい。

【図6】生活習慣によって遺伝子のオン、オフが変わる

病気になりやすい遺伝子を持って生まれたり、生まれた後で遺伝子にキズがついて病気になりやすい遺伝子(赤いロボット)ができたりすることがある。

病気になりやすい遺伝子を持っても、生活習慣を通じてスイッチをオフにすれば病気になることはない。

悪い生活習慣によって、健康を作る良い遺伝子のスイッチがオフになることも。しかし、生活習慣を変えてスイッチのオン、オフを元に戻せば、健康を取り戻せる可能性がある。

 それぞれのロボットは一つ一つの遺伝子を表しています。生まれつき病気になりやすい遺伝子をもっていたり、生まれたあとの環境要因によってきずがついて病気になりやすい遺伝子になったものがあるとします。それが上の列の赤いロボットです。
 ところが、病気になりやすい遺伝子をもっていても、生活習慣を改善するなどして遺伝子の作用が弱まれば、スイッチがOFFになって、病気になることはありません(中央の列の赤いロボット)。
 また、逆に、健康に有益な作用をもつ遺伝子(下の緑のロボット)をもっているのに、悪い生活習慣によって、スイッチが切れてしまっていることもあります(左)。そのときは、生活習慣を改めることで再びONにすれば、健康を取り戻せる可能性が出てきます(右)。

スイッチはONにもOFFにも

まとめると―

・親から引き継いだ遺伝子の中には、健康をつくる作用をもつ遺伝子と病気をつくる作用をもつ遺伝子があり、すべての遺伝子には、その作用を発現させるスイッチがついている
・そのスイッチは、もともとONになっていたりOFFになっていたりするが、悪い生活習慣を続けていれば、健康をつくる遺伝子のスイッチがもともとONだったとしてもOFFになることがある。また、病気をつくる遺伝子のスイッチがOFFだったとしてもONになることがある
・その逆に、よい生活習慣に改善すれば、健康をつくる遺伝子のスイッチがもともとOFFだったとしてもONになることがある。また、病気をつくる遺伝子のスイッチがONだったとしてもOFFになることがある

―ということです。

食事と飲酒が大きく影響か

 
それでは、遺伝子のスイッチを切り替えるのに影響する環境要因とは何でしょうか。
 米国ハーバード大学が1996年に行った研究によると、がんによる死亡の原因としてもっとも大きかったのは、成人してからの「食事と肥満」と「喫煙」で、それぞれ30%を占めました。次に「運動不足」が5%、「飲酒」が3%でした。「遺伝的素因」は5%でした。
 ただし、これは米国人の場合で、日本人にはそのままあてはめることはできないようです。とくに「喫煙」の害は、米国人は日本人より影響が大きいと考えられています。半面、「飲酒」は、米国人より日本人の方が影響を受けやすいと指摘されています。
 奥田氏は、日本人の場合は「食事」がもっとも大きく、それと同じくらいに「飲酒」も重要な環境要因だろうと考えています。
 ほか、見逃せないのが「ストレス」です。
 例えば、東日本大震災など大災害の発生による避難生活で強いストレスがかかった状態になると、食塩に反応して血圧を上げる遺伝子の作用が高まり、塩気の強い保存食を食べると血圧が上昇する「災害高血圧」と呼ばれる現象が起きることがあります。

「10年後、20年後には差が」

 
遺伝的素因がすべてを決めるのであればどうしようもできませんが、生まれてのちの暮らし方によって、遺伝子のスイッチをできるだけ好ましい状態にもっていくことができる、と考えれば、大きな希望がもてます。
 「がん細胞はとくに、1個の細胞の遺伝子に何段階も変化が起きることで成長していきますので、ドミノ倒しのように進むどこかの段階で、がんの発生を促す遺伝子のスイッチを切ることができれば、それ以上は進みません」と奥田氏。
 食生活を改めることの意義については、「すぐによい影響が出るというわけではありませんが、必ずからだはこたえてくれます。エピジェネティクスの変化が現れてくるのが10年後、あるいは20年後になるとして、(食改善を)やった人とやらない人で、やはり差がついてくるだろうと思われます」と話します。
 継続は力なり。そして、チリも積もれば山となる―。
 ふだんの心がけが体質だけでなく、その後の人生や運命まで左右してしまうということです。


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奥田昌子(おくだ・まさこ)
内科医、健診医。医学博士。京都大学大学院医学研究科修了。大規模健診センターで20年にわたり、20万人の人間ドッグ・健康診断に従事し、医学文献や医学書の翻訳にもあたる。著書に『欧米人とはこんなに違った 日本人の体質』(講談社ブルーバックス)、『健康診断 その「B判定」は見逃すと怖い』(青春新書インテリジェンス)など。