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【免疫力UP情報】なぜ日本人には伝統和食が合うのか④

【免疫力UP情報】
昨今、世間を騒がす新型コロナウイルス。
こちらのコーナーではコロナに負けない身体づくりのための情報を、
過去のむすび誌や正食出版発行書籍から抜粋してご紹介致します。
第2弾は「むすび誌2017年9月号」より「なぜ日本人には伝統和食が合うのか」をテーマにした
奥田昌子さんへのインタビュー記事です。(全5回)

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閉経後の女性は大豆で乳がん予防
 
あともう一つが、先ほど取り上げた大豆です。
 大豆は骨を強くする作用に加えて、乳がんの発症率を下げる効果も確かめられています。
 日本人を含むアジア人は、乳房の構造が欧米人とは違って、残念ながら乳がんになりやすい構造をしています。これも遺伝的に不利な点ですが、にもかかわらず、日本で乳がんになる人は、アメリカやイギリスなどの欧米先進国と比べ3分の1ぐらいと、はるかに少ないのです。
 不利な構造をしているのにどうして乳がんが少ないのか、いろんな研究者が調べたところ、どうやら大豆が関係しているのではないかということになりました。
 日本で行われた調査で、閉経後の50?60代くらいの女性を対象に、お豆腐などの大豆食品をどれだけ摂取しているか、大豆に含まれるイソフラボンという成分に換算して、イソフラボンをたくさん摂っている人から少ない人まで、4つのグループに分けたうえで、それぞれのグループの人たちがその後10年間に乳がんになった割合を比べました。(図4参照)
 すると、もっともイソフラボンを食べていないグループの発症率を1とすると、しっかり食べているグループほど、明らかに発症率が低くなりました。もっともたくさん召し上がっているグループは0・32ですから、もっとも食べていないグループの3分の1になるんですね。

【図4】閉経後の女性はイソフラボンで乳がんを予防できる

一方で乳製品の摂取は注意を

 
同様のデータはほかにもいくつかあります。
どうやら大豆のおかげで、アジアの女性は乳がんにならずにすんでいるのではと考えられます。
 イソフラボンはほぼ大豆にだけ含まれる成分です。サプリメントで大量に摂取した場合の効果と安全性については結論が出ていませんので、食品から摂取していただくのが確実と思います。
 また、乳製品が乳がんによくないことを思わせるデータもあります。まだ少ないながらも日本で乳がんが徐々に増えてきている背景には、乳製品の摂取もあるかもしれません。

最近に出始めた「和食がいい」というデータ
―まとめると、日本人にはやはり伝統的な和食が健康にもいいということでしょうか。

 そうです。結局、日本人の体質ということを考えてきますと、和食に行き着くということなんですね。
 私も、和食を勧めようと思って著書を執筆したわけではなかったのですが、調べれば調べるほど、結局、和食がいいという結論になりました。海外の文献などを見ても、「日本ではこうだ」「魚、大豆が良いのではないか」と、よく書いてあります。
 和食がいいというのは、経験的にみなさん知っていたと思いますが、それについてようやく科学的なデータが、わずかですけれども、最近になって出始めました。

乳製品や脂肪と乳がんの関係

 例えば、乳製品や脂肪をよく摂る人ほど乳がんになりやすいというのは、アメリカでも日本でも言われてはいたのです。
 ところが、実際に乳がんになった方にふだんの食生活を尋ねても、必ずしも脂肪をたくさん摂っている人ばかりではないのです。
 その疑問の答えになるようなデータが、一昨年に出ました。それは大人になったいまの食生活ではなくて、10代に乳製品や脂肪分を摂っている方が多かったということだったんですね。

幼いときの食生活が後々影響

 がんというのは、乳がんに限らず、あるとき突然になるわけではなくて、最低でも10年、がんの種類によっては20?40年もかけて、がん細胞が徐々に成長していくわけです。
 だから、もしかしたら、10代の頃に脂肪分や牛乳をたくさん摂取した人は、わかりやすく言えば、ちっちゃながんの種みたいなものがそのときにできてしまっていて、それが長い時間をかけて大きくなって、30代や40代になったときに乳がんになって出てくるということがあってもおかしくないということですね。

―まさに時限爆弾ですね。

 そうです。
 だから、乳がん以外の他の病気でも、10代とか、もっと小さかったときの食生活が、大人になってからの病気の発症にかかわっているということが、これから見つかってくる可能性も十分にあると思います。
 ただ、そうした影響は、いくつになってからでも変えることができるというのが、エピジェネティクスの考え方です。

減塩よりも野菜や海藻でカリウムをしっかり摂取
―和食というと、よく問題にされるのが塩分です。高血圧の原因が塩だと言われて、以前から盛んに減塩運動が行われていますが、塩分だけが問題なのでしょうか。

 昔の日本人が塩分を摂りすぎていたというのは確かです。
 でもそれは、お味噌汁をはじめとする和食のせいというよりは、蒸し暑い気候なのに冷蔵庫がなく、流通も発達していなかったために、お漬物など何でも塩漬けにして食べていたので、必然的に塩分の摂取量が多かったのです。
 その後、冷蔵庫の普及や調味料の多様化などで、日本人の塩分の摂取量は、ほぼ半分にまで減りました。高血圧も、世界全体で見ますと平均以下になっていて、決して多くありません。高血圧になる人の割合はイギリスやフランスよりも低いのです。
 塩の摂取量で単純に比較すると、いまも欧米より多いのですから、高血圧は塩分の摂取量だけで決まるわけではないことになります。単純に考えても、日本は夏は蒸し暑くて汗もかきますし、欧米とはいっしょにはならないような気がします。
 そして、日本や欧米のいろんな研究を併せて考えると、減塩よりも大切なのはカリウムを摂ることだということなんですね。
 カリウムは野菜や海藻にたくさん入っていて、余分なナトリウムの排出を助けます。野菜や海藻をいまの摂取量の倍、摂っていただければ、ナトリウムとバランスがとれて、血圧がもっと下がるでしょう。(図5参照)
 塩分を減らすのは、気候風土の問題や習慣もあって、これ以上はなかなか難しいと思うので、それよりはむしろカリウムを増やすことに力を入れていただきたいと思います。

【図5】ナトリウム/カリウム比が1に近づくほど血圧が下がる

血圧を上げやすいアルコール

―減塩を進めるのなら、味噌汁よりも、1袋に8?10グラムもの塩分が入っているインスタントラーメンの方が問題なのではと思います。

 お味噌汁には、イソフラボンだけではなく、いろんな有効成分が入っているので、飲まないのは非常にもったいないです。

―高血圧はアルコールも関係していますか。

 アルコールで血圧は上がります。とくに日本人はアルコールによって上がりやすいですね。
 顔が赤くなる日本人タイプの方と、なりにくい欧米タイプの方で血圧を比べますと、同じ量のアルコールを毎日飲んでも、日本人タイプの方は半分の日数で血圧が上がるという研究があります。
 やはり、アルコールは日本人にとってはかなり鬼門ですね。


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奥田昌子(おくだ・まさこ)
内科医、健診医。医学博士。京都大学大学院医学研究科修了。大規模健診センターで20年にわたり、20万人の人間ドッグ・健康診断に従事し、医学文献や医学書の翻訳にもあたる。著書に『欧米人とはこんなに違った 日本人の体質』(講談社ブルーバックス)、『健康診断 その「B判定」は見逃すと怖い』(青春新書インテリジェンス)など。
  • 2020年04月28日 17時41分更新
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